2014 Fiscal Year Research-status Report
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26440150
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 道生 九州大学, 基幹教育院, 助教 (00167537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 晋一郎 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40532693)
後藤 栄治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90614256)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CAM植物 / 気孔 / 光合成 / C3植物 / C4植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は二種類のCAM植物コダカラソウとセイロンベンケイソウの気孔開口応答の特徴(気孔開口の日周リズムと光に対する応答)を、光合成蒸散測定装置を用いた気孔コンダクタンスの測定と顕微鏡を使った気孔開度の直接測定とにより解析した。 ①気孔開口の日周リズム;CAM植物の気孔開口は概日時計の制御下にある事が報告されているが、自然光条件下で生育したこれらのCAM植物は夜間、明け方、夕暮れに特徴的に開口することを確認した。特に明け方の開口には10μmol m-2 s-1程度の非常に弱い青色光が有効であることが分かった。この青色光に対する気孔開口反応は通常気孔が閉じている日中においても観察され、自然条件下では日中にある程度気孔が開口していることが分かった。 ②光に対する気孔応答の特徴;光に対する気孔応答はCAM植物の葉から表皮をピールして、気孔開度バッファーに浮かべ測定を行った。ベンケイソウの気孔は、シロイヌナズナなどのC3植物と同様に弱い青色光に応答して開口した。この青色光に依存した開口は強い赤色光(300μmol m-2 s-1)照射下で観察され、K+イオンが必須であった。青色光に依存した開口に加え、カビ毒フジコッキン(FC)によりツユクサやソラマメで見られるプロトンポンプのリン酸化に依存した気孔開口が観察された。FCによるプロトンポンプの活性化は表皮断片でのFC添加によるH+放出反応と予備的にリン酸化抗体を利用したプロトンポンプのリン酸化検出により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAM植物はC3やC4植物と異なり、夜間気孔を開口し日中に気孔を閉鎖する特徴を持つが、そのメカニズムについてはほとんど明らかとなっていない。絶対CAM植物としての特性を持つ二種類の植物、セイロンベンケイソウとコダカラソウを使った研究により気孔応答の日周リズム(夜間、明け方、夕暮れに特徴的に気孔開口がみられる)を確認することができた。さらに青色光に依存した気孔開口反応の特徴或いは部分反応を生理・生化学的に解析することにより、CAM植物はシロイヌナズナやソラマメ、ツユクサなどと同様に青色光に依存して気孔を開口するメカニズムを備えている事を明らかにすることができた。 以上当初計画した、気孔開口における青色光応答性の存在とその特性、及び気孔運動の日周性の特徴を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果を基にして、CAM植物に特有な光に対する気孔開口応答のシグナル伝達メカニズムの解析を進める。 CAM植物の孔辺細胞プロトプラストあるいは孔辺細胞に富む表皮断片を調整し、既知の気孔開口シグナル伝達成分とCAM植物の気孔開口との関係を明らかにする。C3植物の気孔では孔辺細胞に光が当たると、光受容体フォトトロピンが細胞膜H+-ATPaseを活性化し、この酵素の作用などにより様々な浸透物質(カリウムイオン、リンゴ酸、塩素イオン等)の取り込みが誘導され、最終的に気孔が開口する。そこで、前年度の研究で明らかにしたCAM植物の気孔が開口する条件において、孔辺細胞におけるフォトトロピンとH+-ATPaseの活性化状態および主要な浸透物質の蓄積を測定する。フォトトロピンとH+-ATPaseの活性化状態は、ともにリン酸化レベルを測定することにより検出できるため、これまでに分担者井上らが確立した生化学的手法によりこれらを検出する。浸透物質の蓄積については、孔辺細胞の抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、カリウムイオン、リンゴ酸、塩素イオンを定量する。カリウムイオンについてはKステイン法による検出法を併用する。これらの測定法も既に確立済みである。これらの開口のシグナル伝達が光開口時と日周性開口時のどちらでも同様に機能しているのかどうか、各々の開口を区別してシグナル伝達を調べ、その差異を明確にする。
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Causes of Carryover |
研究代表者土井は第56回日本植物生理学会年会に出席する予定であったが、都合(身内の不幸)により出席できなかった。当初出張旅費として計上していた分が次年度使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額52,566円は平成27年度に研究分担者(名古屋大学、井上晋一郎)との研究打ち合わせの旅費として使用する。
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