2015 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナの内生ペプチドエリシターによる耐塩性向上のメカニズムの解明
Project/Area Number |
26440153
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山口 夕 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (60335487)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ペプチドエリシター / シロイヌナズナ / 耐塩性 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナの内生ペプチドエリシターAtPep1の前駆タンパク質AtproPep1を過剰に発現させた形質転換体が、野生型よりも強い耐塩性を示すことを明らかにしてきたが、平成26年度の実験により、地上部へのナトリウムイオンの輸送が制限されていること、そのために地上部での塩ストレス応答遺伝子の発現が顕著に抑えられていることが分かってきていた。これらのことからナトリウムイオンの排出を行うSOS (salt overy sensitive)経路が、AtproPep1過剰発現株で活性化している可能性が出てきていた。半定量的なRT-PCRによりSOS経路の遺伝子発現量が根で高まっている可能性を示唆していたが、平成27年度には、水耕栽培を用いて塩処理したシロイヌナズナの根由来RNAを用いて、定量的RT-PCRによりSOS経路の転写活性化の再現性を調べたところ、過剰発現体と野生型で顕著な違いは認められなかった。しかし、SOS経路はリン酸化などタンパク質レベルでの制御を受けることが知られている。そこでSOS1、SOS2、SOS3にそれぞれタグをつけたタンパク質を発現する系統の入手・作出を行い、現在タンパク質レベルでの解析を始めるところである。 また、根におけるAtproPep1タンパク質をウェスタンブロッティングにより検出したところ、過剰発現株において塩ストレスで翻訳量が増加すること、つまり塩ストレスにより翻訳レベルでの制御を受けていることが明らかとなった。AtPep1がAtproPep1より切断されて放出される機構は現在明らかとなっていないが、その候補としてメタカスパーゼがあげられている。本研究ではシロイヌナズナに存在する9つのメタカスパーゼの中で、2つの遺伝子の発現量が塩ストレス処理時の根で顕著に増加することを見つけた。塩ストレスを受けた時にこれらのメタカスパーゼによってAtpep1が成熟して機能するのではないかと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SOS経路の転写レベルでの変動について、予定通り定量的RT-PCRで再現性の確認を行った。残念ながら再現性は見られなかったが、タンパク質レベルでの解析にターゲットを絞ることができ、現在そちらを進めている。また、当初予定していた病害抵抗性と耐塩性との関係についての解析は進んでいないが、AtproPep1の翻訳が塩ストレスにより正に制御されていること、塩ストレス条件下でのAtproPep1からAtPep1への成熟に働く候補として、新たに二つのメタカスパーゼを見出すことができた。そのため、達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
入手・作成しているSOS1~3の過剰発現シロイヌナズナを使って、外生的に与えたAtPep1がタンパク質レベルでの活性化をもたらすか調べていく。また、塩ストレス下でのAtproPep1の成熟に関わっている可能性のある二つのメタカスパーゼについて、組換えタンパク質を作成して実際にAtproPep1の切断能力があるかを調べるとともに、T-DNA挿入変異体を使ってこれらのメタカスパーゼの存在がAtPep1の成熟に必要であるか in vivoで解析していく。
|