2015 Fiscal Year Research-status Report
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26440154
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高瀬 智敬 学習院大学, 理学部, 助教 (30392012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光周性 / 花芽形成 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、長日条件でfkf1変異体の花成遅延が回復したfkf1サプレッサーをスクリーニングすることで新規の光周性花成を抑制する因子を単離し、その作用点を明らかにすることで複雑に制御された光周性花成制御経路に関する新たな知見を得ることである。昨年度は、ポジショナルクローニングによる変異遺伝子の同定、別アリルを使用したfkf1サプレッサー形質の再現性の確認、そして同定した花成抑制因子の作用点の解明を進めた。 これまでに長日条件で40日頃までに抽台するfkf1サプレッサーの花成時期を測定し、これらサプレッサーにおけるFTの発現量を調べている。FTは光周性花成を促進する因子であり、fkf1変異体ではこの発現が抑えられていることから、FTの発現が増加したサプレッサーの原因遺伝子は光周性花成の抑制に関わると考えられる。そこで、スクリーニングにより得られたfkf1サプレッサーの中でもFTの発現が増加したものについて、ポジショナルクローニングより変異遺伝子の同定を進めた。そしてサプレッサーで変異が見つかった遺伝子の遺伝子破壊体をABRCから取り寄せ、花成促進の形質が再現されるか調べることで、同定した変異遺伝子が花成促進の原因であることを確かめた。 同定した花成抑制因子の作用点の解明では、まずFTの経時的な発現変化を調べた。野生型(Col)ではFTの発現は日中に抑えられて夕方にピークを示す一方で、fkf1変異体ではその発現は一日を通して抑制されている。fkf1変異体に対して顕著に花成が促進されたサプレッサーの中には、日中に野生型よりもFTの発現が増加しているものが見つかった。また、いくつかのサプレッサーについてfkf1を野生型に戻したモノジェニック変異体の花成時期を測定することで、同定したこれらの花成抑制因子がfkf1変異とは独立して働いていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について、昨年度に引き続きポジショナルクローニングによる変異遺伝子の同定を行い、さらにfkf1サプレッサーにおける光周性花成制御因子の発現変動を経時的に調べることで、同定した花成抑制因子の作用点の解明を進めた。 fkf1変異体よりも顕著に花成が促進され、FTの発現が増加したサプレッサーの変異遺伝子の同定を進めたところ、これまでに合せて10ラインについて変異遺伝子を同定した。これら変異遺伝子の中でも新規花成抑制遺伝子EF1は、独立した2つのラインの変異遺伝子として同定された。同定した変異遺伝子の遺伝子破壊体をABRCから取り寄せ、それらの花成時期を測定することで、同定した遺伝子の変異が花成促進の原因であるか調べた。また2つのef1 fkf1変異体(ef1-1 fkf1、ef1-2 fkf1)同士を掛け合わせ、得られたF1植物の花成時期が2つのef1 fkf1変異体と同様に早咲き形質を示したことから、EF1は新規の花成抑制遺伝子であることが示された。 光周性花成を促進するFTの経時的な発現変動を解析したところ、いくつかのサプレッサーでFTの発現がfkf1変異体よりも増加しており、これらサプレッサーから同定された因子はFTの発現を抑制することで花成を抑制することを明らかにした。また、DNAマイクロアレイを用いた、サプレッサーの網羅的な遺伝子発現解析を進めている。さらに、pFT:GUS等のレポーター植物とサプレッサーの掛け合わせを進めており、今後FT等の空間的な発現パターンを観察することで、同定した花成抑制因子の作用点を明らかにする予定である。また、ef1変異体はef1 fkf1変異体と同時期に抽台することから、EF1はFKF1と独立して花成を抑制する因子であることを明らかにした。他のサプレッサーについても同様にFKF1と独立して働くか否かについて解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでに同定した花成抑制因子の作用点の解明を中心に研究を行う。また、光周性花成制御経路は概日時計と光シグナルにより複雑に制御されることから、ルシフェラーゼレポーターを利用した概日リズムの測定、そして明所、暗所での胚軸長を測定することで、同定した花成抑制因子が概日時計の制御や光シグナル経路上で働くか否かを明らかにする。 FTの発現量がfkf1変異体よりも増加したサプレッサーについては、ft変異体と掛け合わせて二重変異体を作成する。この二重変異体の花成時期を測定することで、FTの発現増加がサプレッサーの花成促進の原因であるか否かを確かめる。さらに、CO等、FTの発現を制御する遺伝子の経時的な発現変動をリアルタイムPCRにより調べることで、同定した花成抑制因子の作用点がFTの発現調節であるか否かを調べる。そして、DNAマイクロアレイ解析によってFT以外の作用点の候補遺伝子が見つかった場合、その発現変動についてリアルタイムPCRにより調べる。また、新規花成抑制遺伝子として同定されたEF1遺伝子はDNAポリメラーゼのサブユニットをコードすることから、EF1と他のDNAポリメラーゼのサブユニットとの相互作用を、酵母ツーハイブリッド法により確かめる。さらにef1と他のDNAポリメラーゼの変異体を掛け合わせることにより、DNAポリメラーゼの機能欠損が花成制御に及ぼす影響について明らかにする。 同定した花成抑制因子が概日時計の制御に関与するのか明らかにするために、概日時計の解析に利用されているルシフェラーゼレポーターが導入されたサプレッサーを掛け合わせにより取得し、発光リズム測定装置を用いて解析する。さらに、サプレッサーの明所(白色光、あるいは赤、青、遠赤色光)、及び暗所での胚軸長を測定することで、同定した花成抑制因子の光シグナル経路上での働きを明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度は、ポジショナルクローニングによる変異遺伝子の同定、別アリルを使用したfkf1サプレッサー形質の再現性の確認、そして花成制御遺伝子の発現解析を行った。これらの解析の内、ポジショナルクローニングと遺伝子発現解析を進めるためには、核酸を調製するための試薬、キットやPCRを行うための試薬を用いるが、昨年度は研究室にこれらのストックがまだ残されていたため、そちらを先に使用して解析を行った。これら以外の本研究課題に使用した試薬、消耗品についても、研究室にストックが残されていたものについては、そちらを先に使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は前年度に引き続き、スクリーニングにより得られたそれぞれのサプレッサーにおける花成制御遺伝子の発現解析を計画している。これらの解析を行うために、核酸の調製やPCRを行うための試薬、キット等の購入を予定している。また、GUSレポーターを用いて花成制御遺伝子の空間的な発現パターンの解析と、ルシフェラーゼレポーターを用いて概日リズムの解析を計画しており、これらに使う試薬についても購入を予定している。さらに、これら以外に本研究課題で使用する制限酵素などの分子生物学試薬やプラスチックシャーレなどの消耗品についても必要時に購入する。 また、今年度の日本植物学会年会は沖縄で、日本分子細胞生物学会年会が長野、そして日本植物生理学会年会が横浜で行われるため、これらに参加するために旅費を使用する予定である。さらに、本研究課題をまとめた論文を学術誌に投稿予定であり、これに関わる費用を使用する予定である。
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