2015 Fiscal Year Research-status Report
植物界で初めて発見された水溶性アスタキサンチン結合蛋白質による強光防御機構の解明
Project/Area Number |
26440155
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
川崎 信治 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50339090)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微細藻類 / 極限環境 / カロテノイド / アスタキサンチン / 強光ストレス / 光酸化ストレス / 活性酸素 / 有用物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は強光が付随する環境ストレス下では、活性酸素の生成を伴う光酸化ストレスを発生し枯死にいたる。申請者は一般植物の生育が困難な過酷な生育環境から微細藻類の探索を行い、70株ほどの真核微細藻類を単離・保有している。これら極限藻類は淡水性でありながら強い耐塩性を示し、強光下の水分が0%の環境で数ヶ月間生存するなど優れた環境ストレス抵抗性を示すことから、一般植物には無い環境ストレス耐性機構の存在が示唆された。本科研費では真夏のアスファルトから単離した真核の微細藻類Ki-4株がもつ優れた環境ストレス耐性能の解明を主要な目的として研究を行っている。本藻類は高度の環境ストレス抵抗性を有し、ストレス耐性期に細胞抽出液がオレンジ色に変色することに着目し研究を進めた結果、アスタキサンチンを結合するオレンジ色の水溶性タンパク質(AstaPと命名)を大量に合成することが判明し、その精製に成功した。アスタキサンチンはエビやカニ、フラミンゴの羽などに含まれる脂溶性のカロテノイドで、高い抗酸化力を持つことから化粧品や機能性食品に幅広く利用されている。植物界におけるアスタキサンチンは真核の微細藻類ヘマトコッカス藻などが細胞内に油滴として蓄積することが知られているが、水溶性のカロテノイド結合タンパク質は真核の植物界には分布しないと考えられていた。 本研究では真核の植物界で始めて発見された水溶性のカロテノイド結合タンパク質の全容解明を目的として、1)高度の水溶性と耐熱性を実現するAstaPのタンパク質構造の解明、2)プロテオーム解析とトランスクリプトーム解析によるKi-4株固有の強光防御プログラムの解明、3)生物界に分布する機能未知AstaPホモログの分布調査と機能解明、4)極限環境から単離した微細藻類コレクションにおけるさらなるユニークな光酸化ストレス防御機構の探索、などの計画のもとに研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要欄に述べた研究目的に関して、全体的に順調に進展している。AstaPタンパク質の結晶化には大量のタンパク質が必要であり、リコンビナントタンパク質による解析を進めているが、結合する糖鎖の影響や糖鎖構築などの問題点を考慮すると、ネイティブタンパク質による実験も必要と判断し、リコンビナントタンパク質による解析と同時に、ネイティブタンパク質による解析も進めている。他はおおむね順調に推移しており、今後は再現性の取得とデータのまとめを行う方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であることから、これまでに行った研究の再現実験と、得られた結果の検証と評価を重点的に行い、より正確なデータとしてまとめる方針である。Ki-4株の強力な光酸化ストレス防御システムの解明に関しては、現在cDNAライブラリの解析を行っており、おおむね順調に進んでいる。昨年度はAstaPを効率良く生産する他の微細藻類のスクリーニングを行ったため、本藻類の詳細な解析を行うことで、Ki-4株で得られた様々な生理機能や遺伝子発現プログラムに関して比較解析を行うことが可能となった。本年度はこれらを踏まえ、国際誌や学会での発表を念頭に置き、研究を進める方針である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際学会への参加が所属大学の業務のため不可能になり、申請した旅費は使用しなかった。初年度に消耗品費の残額が生じた直接経費分を、2年目に使用したことから、結果的に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究が順調に進展していることから、本年は研究活動に使用する消耗品がやや多く必要となる計画である。また本年度は国際学会への参加、調査研究のための海外出張、論文化の経費、などを予定していることから、未使用残額を利用して研究活動に充当する方針である。
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Research Products
(4 results)