2014 Fiscal Year Research-status Report
アンフィビアスに至る脊椎動物の進化モデル動物のグレリンシステムの変遷
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26440174
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
海谷 啓之 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40300975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮里 幹也 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50291183)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グレリン / グレリン受容体 / 脳 / 下垂体 / 肺魚 / ツメガエル / チョウザメ |
Outline of Annual Research Achievements |
グレリンは、成長ホルモン分泌や摂食、エネルギー代謝などを調節するホルモンである。本研究は、水棲動物が陸に進出する過程のモデルとなる動物に注目し、グレリンやその受容体(GHS-R1a)の存在意義について考察することを目的とする。平成26年度は、(1)無尾両生類の下垂体でグレリンが作用する機序、(2)イモリにおけるグレリンの摂食調節への関与、(3)アホロートルのグレリン受容体、(4)肺魚のグレリン受容体、(5)チョウザメにおけるグレリンの単離、の5つの達成目標を挙げて研究を推進し、3つについて進展があった。 (1)アフリカツメガエルでGHS-R1aのクローニングを行ったが、脳では全長cDNAが得られるのに対し、下垂体ではスプライスバリアントGHS-R1bのcDNAしか増幅しなかった。これはウシガエルと同様の結果であり、下垂体には全長のGHS-R1a遺伝子が発現していない可能性が示唆された。 (4)肺魚(Protopterus annectens)の脳から361、281アミノ酸からなるGHS-R1a、GHS-R1bをコードするcDNAを単離した。機能解析の結果、肺魚GHS-R1aは機能的受容体であることが確認された。GHS-R1a mRNAは脳、心臓、腸などで発現していた。肺魚は乾燥時に夏眠という生理状態になるが、8週間の夏眠の間に採取したサンプルの解析結果から、グレリンシステムが夏眠時の浸透圧調節やエネルギー代謝調節に関与することが示唆された。 (5)チョウザメ(ベステル:Huso huso×Acipenser ruthenus交雑種)の胃からグレリンとそのcDNAを単離した。前駆体タンパク質は114アミノ酸からなる。成熟型は27アミノ酸であり、C末端はアミド化されていた。興味深い事に、同一個体中で塩基配列の異なるmRNAが発現しており、グレリンの15位のアミノ酸がグルタミン酸とグリシンの場合があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画として約60%の達成度である。それぞれについては以下の通り。 (1)下垂体でグレリンが作用する機序の解明(達成度50%):ツメガエルとウシガエルの下垂体で同様の結果が得られたことは興味深く、探している機序の一端を見ていると思われる。また、ツメガエルにあるグレリン受容体に似た2種類の受容体をツメガエルでクローニング後、機能を解析し、それらのオーソログをウシガエルやアマガエルから同定する予定であるが、ツメガエルでその2種の受容体の全長cDNAを得る過程の5’RACE -PCRで期待される産物が得られていない。 (2)イモリにおける摂食調節(達成度20%):合成イモリグレリンを投与して実験を行ったが、実験中、餌を食べなくなってしまう。個体隔離の影響と投与の影響などが考えられ、改善策を考えている。 (3)アホロートルGHS-R1a cDNAのクローニング(達成度30%):アホロートルでは2種類の断片が同定できている。これらの断片の高発現組織から調整したRNAを用いて全長cDNAをRACE-PCRで増幅を試みているが目的物は得られていない。 (4)肺魚GHS-R1a cDNAのクローニング(達成度100%):GHS-R1a、GHS-R1bのcDNAクローニングに成功し、GHS-R1aの機能解析、組織分布、また両受容体遺伝子の夏眠時における変化を脳、下垂体、腸で調べ、論文として発表した(Gen Comp Endocrinol., 209: 106-117 (2014))。 (5)チョウザメグレリンの単離とcDNAクローニング(達成度80%):ベステルの胃からグレリンをペプチドとして単離し、その情報を元にグレリンのcDNAのクローニングに成功した。現在、組織分布や初期発生過程におけるグレリンmRNAの発現を調べるため、組織や個体を採取中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)下垂体でグレリンが作用する機序:ツメガエルにあるグレリン受容体に似た2種類の受容体をツメガエルでクローニングしなければならない。下垂体totalRNAからのテンプレートcDNAの再調整、RACE-PCRの条件設定の見直しを行う。得られた情報から、それらのオーソログをウシガエルやアマガエルから同定する予定である。その後、哺乳類細胞に受容体タンパク質を発現させて、CaイオンやcAMPなど細胞内メッセンジャーの産生をFLIPR、alpha-Fusionを用いて、また細胞抵抗をCellKeyを用いて測定し、受容体の機能解析を行う。 (2)イモリにおけるグレリンの摂食調節:摂餌量を測定できる実験条件を設定する。現在、個別ではなく数匹をグループとして実験が行えないか考えている。 (3)アホロートルのグレリンとGHS-R1a cDNAのクローニング:グレリンについては、胃のRNAを用いてクローニングを試みたが成功していない。胃からペプチドを単離するため、10gの胃(1匹約0.5g)を目標に収集している。GHS-Rは2種類の断片が得られているが、RACE-PCRで増幅できていない。組織やPCRの条件の見直しが必要である。 (5)チョウザメグレリンとGHS-R1a cDNAクローニングと機能解析:組織分布や初期発生過程におけるグレリンmRNAの発現を調べるため、組織や個体を採取中である。GHS-R1aについては、脳や下垂体のサンプルを得てから着手する予定である。
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Causes of Carryover |
実験の進展状況により、物品購入(主に動物購入)がやや少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度中に計画を達成するために、動物の購入量を増やす予定である。
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