2015 Fiscal Year Research-status Report
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26440182
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
本間 光一 帝京大学, 薬学部, 教授 (90251438)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経科学 / 行動学 / 脳・神経 / 動物 / 薬学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、T3による学習能力向上の脳内メカニズムと、記憶学習の初期記憶を維持する脳領域に関する研究成果が得られた。
T3は、刷り込み学習を始めると急速に脳内に取り込まれて神経細胞に作用して非遺伝子的な作用を引き起こす。本年度はT3の下流にNucleotide diphosphate kinase 2があり、この酵素の作用を抑えると、T3依存の刷り込み学習が起こらないことを明らかにした。T3は神経細胞内に存在する受容体TRと結合した後、他の遺伝子発現を制御することに先んじて非遺伝子的な作用を引き起こすことが刷り込みに重要であることを示してきたが、Nucleotide diphosphate kinase 2は、T3による非遺伝子的な作用を担う細胞内シグナル分子の一つと考えられる。
さらに刷り込み学習においてT3が作用する脳領域を新たに同定した。これまでT3が作用する脳領域としては、刷り込み記憶形成の初期過程でIMM領域が必要であることが知られていたが、本年度はIMMで形成された初期記憶が転座して維持される脳領域としてIMHA領域を新たに同定した。そしてIHMA領域の働きを抑制するとIMM領域で形成された初期記憶が維持できないことを明らかにした。これまでIMM領域は、刷り込み学習の記憶形成の初期過程のみに必要であり、その後脳内の未同定の脳領域に情報が転座することが示唆されてきた。IMHA領域は刷り込み記憶の転座先と考えられる重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、T3の細胞内シグナル伝達に関する Nucleotide diphosphate kinase 2の同定と、刷り込み記憶の長期維持に関わるIMHA領域の同定の2報の学術論文の成果があり、T3のメカニズムに関する研究成果が順調に得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、T3の細胞内シグナル伝達に関する進展が見られ、また新たに記憶維持に必要な脳領域を同定できたので、今後は、T3の細胞内シグナル伝達に関する更なるメカニズムの解明と、記憶の初期記憶を維持させる脳内転座のメカニズムについて解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果は、比較的安価な試薬購入実験が遂行可能であったので、使用予定であった差額分を、次年度で必要とされる抗体や遺伝子工学試薬、イメージングに必要な整備などに使用する計画に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由によって必要とされる抗体や遺伝子工学試薬、イメージングに必要な整備などに使用を計画している。
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Research Products
(6 results)