2015 Fiscal Year Research-status Report
腸上皮組織に存在するアセチルコリンの新規生理学的役割の解明
Project/Area Number |
26440184
|
Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
高橋 俊雄 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, 研究員 (20390792)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 非神経性アセチルコリン / コリン作動系 / 腸上皮 / 腸幹細胞 / 腸オルガノイド / ニコチン性アセチルコリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス腸組織及び腸オルガノイド培養系を用いて腸上皮におけるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)の局在を、遺伝子発現解析法及び免疫組織化学的手法で調べた結果、腸上皮にnAChRsのサブユニットが発現・局在していることを見出した。次に、nAChRsの選択的アゴニストであるニコチンの作用を、腸オルガノイド培養系を用いて調べたところ、腸オルガノイドの成長及び腸オルガノイドを構成する細胞(腸幹細胞、吸収上皮細胞、パネート細胞、腸内分泌細胞、杯細胞)のマーカー遺伝子の発現を促進させることを見出した。一方、nAChRsの選択的アンタゴニストであるメカミールアミンは、腸オルガノイドの成長及びマーカー遺伝子の発現を抑制した。さらに、nAChRsの下流域に働く遺伝子群を、次世代シークエンサーを用いたRNA-Seq法によるトランスクリプトーム解析を行った結果、Wntシグナルの1つであるWnt5a遺伝子の発現がニコチン処理により顕著に変動することがわかった。また、Wnt5aタンパク質がマウス腸上皮層に分布していることを始めて確認できた。薬理実験の結果から、Wnt5aは腸オルガノイドの成長及びマーカー遺伝子の発現を促進し、一方、Wnt5aの分泌阻害剤であるIWP-2で処理すると抑制することを見出した。さらに、メカミールアミンの抑制効果は、Wnt5aによりレスキューされることを確認した。このことは、nAChRsシグナルの下流域にWntシグナル(Wnt5a)が関与していることを強く示唆する結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)腸オルガノイド培養系を用いた解析から、nAChRsを介した非神経性アセチルコリンの効果は腸幹細胞の分化・増殖を促進することを見出した。 (2)nAChRsシグナルの下流域で働くシグナルがWntシグナル(特にnon-canonical Wntシグナル)であることを明らかにすることができた。 (3)Wnt5a処理により腸オルガノイドの成長と分化・増殖を促進し、一方、阻害剤のIWP-2で処理すると抑制効果を示すことを見出した。 (4)nAChRsのアンタゴニストであるメカミールアミンの抑制効果は、Wnt5aによりレスキューされることを確認した。このことは、nAChRsの下流域にWnt5aを介したnon-canonical Wnt シグナルが関与していることを強く示唆する結果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)腸オルガノイドを構成する個々の細胞を同定し、アセチルコリン(ACh)処理後のマーカー遺伝子のmRNA分子数の変動を定量解析するためにsinge molecule FISH法(smFISH法)を導入する。そして、どの細胞がAChを合成・分泌し、どの細胞に局在する受容体を介してシグナルを伝達し、腸幹細胞の分化・増殖、維持に関わっているかを解明する。 (2)mAChRsのノックアウトマウス(M2, M3, M2/M3)を用いて、薬理実験で得られた成果(Takahashi et al. FEBS J 2014)の検証を行う。 (3)nAChRsとムスカリン性ACh受容体(mAChRs)の発現部位や、非神経性AChの両受容体を刺激するタイミングや強度を明らかにし、腸幹細胞の分化・増殖に対する促進・抑制の二面性の作用をもたらす意義を明らかにする。
|
Research Products
(14 results)