2014 Fiscal Year Research-status Report
構成蛋白成分を交換した筋線維を用いた昆虫飛翔筋動作機構の解明
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26440185
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
岩本 裕之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (60176568)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫飛翔筋 / メカノセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
蚊のような小型の昆虫は500Hz以上の周波数で羽ばたく。通常の筋肉では到底実現不可能な高周波の羽ばたきを可能にするのは、昆虫飛翔筋の高い自励振動能力であるが、その分子機構は不明のままだった。研究代表者のこれまでの研究から、自励振動能力を与えるのが定説のようにアクチン繊維側の調節タンパクではなく、むしろミオシンそのものだという重要な示唆が得られた。 本研究課題では、昆虫飛翔筋のミオシンだけで自励振動能力が説明できるのか、またはアクチン繊維側の飛翔筋特異的蛋白質(アクチン、トロポニンなど)も必要なのかを明らかにするため、昆虫飛翔筋の蛋白質を外来(脊椎動物)のものと交換する実験を試みている。1つは昆虫飛翔筋のミオシン繊維を除去し、脊椎動物のミオシンと交換する実験であり、2つ目は昆虫飛翔筋のアクチン繊維を除去し、脊椎動物のアクチンと交換する実験である。 前者は、昆虫と脊椎動物で、ミオシンが可溶化するイオン強度が異なることを利用した実験である。昆虫のミオシンが可溶化しないイオン強度で、可溶化した脊椎動物ミオシンを加えてインキュベートしたところ、脊椎動物ミオシンが飛翔筋線維中に取り込まれることが分かった。しかしこのようにして再構成した飛翔筋線維は力学的に弱くなっており、自励振動能力があるかどうかは確認されていない。 現在、飛翔筋線維からアクチンを除去し、脊椎動物のものと交換する実験を行っている。ゲルゾリンにより飛翔筋線維を除去する最適条件は確定し、ほぼ完全にアクチン繊維を除去することが可能になった。この状態でもミオシン繊維の格子構造は保たれていることも分かった。現在、脊椎動物のアクチンを飛翔筋線維内に再構成するための最適条件を探っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9項に記載した2種の実験のうち、アクチン繊維再構成の実験が有望であることが判明したこと。また9項に記載した以外の付随する実験においても成果が出ており、論文投稿の運びとなっていること。
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Strategy for Future Research Activity |
9項に記載した通り、アクチン繊維再構成実験において最適な条件を模索し、脊椎動物のアクチン繊維をもった昆虫飛翔筋線維が自励振動能を持つかどうかを確認する予定。その他にマルハナバチ以外の生きた昆虫の飛翔時の飛翔筋高速X線回折実験、インビトロ測定実験などを計画。
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Causes of Carryover |
26年度、インビトロ測定用の機器(微動ステージ、位置検出用ダイオードなど)などを購入予定であったが、収縮蛋白交換実験を優先して行ったため、これらが未執行となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は収縮蛋白交換実験の継続に加えてインビトロ測定の準備も進める予定であり、上記の機器も併せて購入する。
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Research Products
(8 results)