2014 Fiscal Year Research-status Report
多様な無脊椎動物の比較解析基盤としての比較ゲノムデータベース構築
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26440193
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 俊徳 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00323692)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオインフォマティクス / ホヤ / ゲノム解読 |
Outline of Annual Research Achievements |
多種生物にまたがる比較ゲノム・オミックス統合データベースの開発をめざし、過去にバイオインフォマティクス推進事業の支援を得て構築したホヤ統合プロテインデータベースCIPROのデータ解析スキームを飛躍的に発展させるため、基礎となる解析対象生物種の選定に着手した。特に、沖縄科学技術大学院大学の佐藤矩行教授との連携のために研究打ち合わせを行い、今後、彼らの研究グループが目指す、すべての動物門から1種ずつ以上のゲノム配列決定およびその公開にあわせ、生物種間の比較系統解析、および解析の先行するモデル生物の実験情報・アノテーション情報の連携化を行うため、配列比較解析に着手した。具体的には、これまでゲノム解析のモデル生物として使われてきた生物種群から大幅に離れた生物種のサンゴAcropora digitifera、真珠貝Pinctada fucataのゲノム配列の比較解析を行った。脊索動物との分岐は、6億年前のカンブリア爆発の頃よりも前と想定されるこれらの生物との比較解析に際しては、低い配列類似性のみならず、ゲノム中に含まれる遺伝子の大幅な重複や欠失が見られるために、相同遺伝子の定義自体に多くの課題があることが明らかとなった。加えて遺伝子予測の精度にも大きな課題が残っており、解読ゲノム配列の信頼性の指標も存在しないため、生物間比較において共通性と種特異性を明確に定義することができないことが明らかになった。そこで繰り返しの比較・予測・アノテーション処理によって漸近的に真の姿に近づくことをめざすこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでゲノム解析のモデル生物として使われてきた生物種群から大幅に離れた生物種のサンゴAcropora digitifera、真珠貝Pinctada fucataのゲノム配列の比較解析を行った。脊索動物との分岐は、6億年前のカンブリア爆発の頃よりも前と想定されるこれらの生物との比較解析に際しては、低い配列類似性のみならず、ゲノム中に含まれる遺伝子の大幅な重複や欠失が見られるために、相同遺伝子の定義自体に多くの課題があることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究によって、低類似性の相同遺伝子同定と、遺伝子の重複(duplication)・拡張(expansion)・欠失(deletion)の同定に大きな課題があることが明らかとなった。一方で、生物系統進化において、遺伝子重複・拡張・欠失は遺伝子のスペクトルを大きく変化させるとともに、生物としての本質的な性質を特徴づける要因となっており、比較解析において欠かさざる部分である。同時に、研究の先行するモデル生物において見られない遺伝子は、細粒の注釈(annotation)は困難である。今後は、配列比較と配列解析を中心に行い、生物種間に共通する基幹遺伝子群および生物種固有遺伝子群を、質・量の観点から定義し、こうした課題を具体的に明らかにしてゆく。また、open biological and biomedical ontology (OBO)を駆使して遺伝子の種類を定義し、遺伝子機能の手掛かりを示すことを目指す。また、転写制御の共通する遺伝子セットを定義し、生物種ごとにこの領域の特徴抽出を目指す。
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Causes of Carryover |
前年度に学科長・専攻長・コース長・入試責任者等の重責役職が重なり、加えて研究室のスタッフが5月末に海外研究機関へ転出しため、研究室の指導学生数が20名を超え、講義負担増と相まって、研究の推進がやや難しくなってしまった。それでも年度の研究に関わるプログラム開発等は推進できたが、実際の解析を行う機器類の導入および成果発表がやや遅れることになったため、関連予算を次年度使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に解析用機器類の購入および成果発表、および、関連するデータ入力等のための謝金、その他関連経費(印刷費、通信費、記録媒体、英文校閲等を含む)の一部として使用する。
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