2014 Fiscal Year Research-status Report
各種アブラムシにおける細菌由来水平転移遺伝子群の網羅的探索と進化解析
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26440196
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
岡村 恵子 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合, 研究員 (10570533)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アブラムシ / 菌細胞 / 相利共生 / 遺伝子水平転移 / オーソログ遺伝子 / 分子系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業害虫であるアブラムシは、腹部体腔内の「菌細胞」に収納した共生細菌「ブフネラ」と、栄養学的に強固な相利共生関係を築いている。先頃、「エンドウヒゲナガアブラムシ」のゲノム上に、共生細菌ブフネラ以外の細菌から水平転移し、菌細胞内で特異的に発現が亢進している遺伝子群が発見され、ブフネラとの共生において重要な役割を果たしていることが示唆された。そこで本研究では、90種の多様なアブラムシを用いて、水平転移遺伝子の検出と構造解析・分子系統解析を行い、これらはアブラムシの進化の歴史上、「いつ獲得され、その後どのように進化・多様化してきたのか。」という疑問を解明する。 まず、「エンドウヒゲナガアブラムシ」のゲノムより見つかった12種類の細菌由来水平転移遺伝子のうち、LdcA1について、アミノ酸配列をBLASTに基づく類似性検索にかけ、類似性の高いOrientia tsutsugamushi、 Wolbachia spp.などのLdcA1のオーソログを、データベースより抽出した。そして多重アラインメントを行い、アミノ酸配列中の保存性の高い領域に、縮重プライマーセットを設計した。90種アブラムシより抽出されたDNAを鋳型として、縮重プライマーセットを用いた縮重PCRを行い、各PCR産物に対し1%アガロースゲル電気泳動を行い、目的領域のPCR増幅を確認した。多くの種からは単一バンドが得られたが、ごく一部のアブラムシ種については、複数バンドが検出された。そこで、90種アブラムシより得られた縮重PCR産物を標的とし、エンドウヒゲナガアブラムシLdcA1遺伝子の部分配列(約470塩基)をプローブDNAとした、サザンブロッティング解析を行った。その結果、全てのアブラムシのPCR産物からシグナルが検出され90種アブラムシには、エンドウヒゲナガアブラムシと同様のLdcA遺伝子が存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究成果は、申請時の研究目的および当該年度の研究実施計画にほぼ準じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、申請時の研究計画にもとづく。 ①前年度の研究のサザンハイブリダイゼーション解析から、陽性シグナルが得られたDNA 断片のサブクローニング(陽性シグナルが検出されたサイズ領域のDNA を精製し、TAクローニング法によるサブクローニングを行う。)、②コロニーハイブリダイゼーションによるプラスミド挿入断片の確認(サブクローニングにより、寒天培地上に出現した大腸菌コロニーをナイロンメンブレンに転写する。エンドウヒゲナガアブラムシ由来のプローブDNAを用い、サザンハイブリダイゼーションを行う。)、③陽性クローンのシークエンス解析(陽性シグナルが得られた大腸菌のコロニーについて、コロニーPCR により挿入DNA断片を増幅する、または大腸菌の培養物からプラスミドDNA を抽出・精製することでシークエンス反応の鋳型DNA を調製し、シークエンス解析を行う。)、④水平転移遺伝子のコピー数・構造の解析(水平転移後の遺伝子増幅の可能性を検証するとともに、各遺伝子の構造を精査し、ORF構造やKa/Ks解析により、各配列のタンパク質コード遺伝子としての機能性を検討する。)、⑤分子系統解析(各種アブラムシから得たオーソログ配列について、多重アラインメントを行う。分子系統解析は近隣結合法最尤法により行う。)、⑥各種アブラムシの系統的位置付けの確認(真核生物の系統マーカー遺伝子である、COI遺伝子やEFαI遺伝子についても分子系統解析を行う。)
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Causes of Carryover |
研究を遂行するにつれて、実験技術が向上し、失敗を最小限にとどめることが出来るようになった。そのため、予定していた分子生物学的試薬の使用量を抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度には、新たな実験を計画しているため、技術的な鍛錬を行うためにも、次年度使用額と翌年度分を併用する必要がある。
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