2016 Fiscal Year Annual Research Report
An inclusive study on the phylogenic evolution of the Drosophila virilis section (Diptera: Drosophilidae)
Project/Area Number |
26440203
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡部 英昭 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10167190)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ショウジョウバエ / 系統進化 / 適応放散 / 地理的分布 / 東アジア / 南西中国 / 染色体核型 |
Outline of Annual Research Achievements |
北半球全域に広く分布しているクロショウジョウバエ類の適応放散の歴史は,半世紀以上も前から欧米の進化遺伝学者によって研究されてきた。しかしこれまで研究されてきた北米と欧州に棲息する種はどれも系統樹の末端に位置するもので,言わば進化の派生種である。東南アジア熱帯,南中国の低緯度高地,および南西諸島から北海道にいたる日本列島での調査研究から,ユーラシア大陸と北米温帯林に棲息するクロショウジョウバエ類の起源は東アジアの低緯度高地と考えられた。雲南省と貴州省にまたがる雲貴高原には,北米大陸に分布しているほとんどすべての種群が棲息している。またこれらの種は形態学的,核型的,分子系統学的に系統樹の基部に位置し,北米大陸で適応放散した分類群の祖先種と考えられる。 インドネシアの低地にはクロショウジョウバエ区のなかで熱帯性の種群が棲息しており,その一部の分布は日本列島にも及ぶ。一方,1000m以上の高地には温帯性の種群が棲息している。バリ島以西のインドネシア諸島は第四紀氷期の時にアジア大陸と陸続きになったが,その時代に大陸から渡り住んだもので,氷河期終了後の気温の上昇に伴い,棲息地を高地に求めたと考えられる。 日本列島には本分類群を構成するすべての種群が棲息しており,生物多様性が極めて高い。東アジア低緯度高地を起源とする北半球温帯性のショウジョウバエ類にとって,日本列島は欧米への移住回廊と考えられる。各種群の地理的分布は気候帯・植生帯で明瞭に異なっている。熱帯性のangor種群の北限は奄美諸島と屋久島間に横たわる渡瀬ライン,polychaeta種群の北限は南関東地方の照葉樹林帯である。robusta種群の1種の北限は津軽海峡(ブラキストン線)であった。 飼育が困難なangor種群とfluvialis種群の染色体を明らかにした。両種ともX染色体は端部附着型で,核型的に祖先種と考えられる。
|
Research Products
(4 results)