2016 Fiscal Year Research-status Report
日本近海に広域分布する海藻類の多種系アプローチによる比較系統地理学的解析
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26440208
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
嶌田 智 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40322854)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海藻 / 系統地理 / RADseq / 環境適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本近海に広域分布する海藻類の多種系アプローチによる比較系統地理学的解析をおこない,分布変遷史,個体群の遺伝的多様性の理解だけでなく,異なる環境への分布拡大に関与した環境適応分子進化の解明や、未来の分布域シミュレーションにも挑戦している。当該年度に関しては,①DIYABC解析,②RADseq解析,③環境適応分子進化に関する解析を進めた。 ①DIYABC解析では,褐藻ヒジキ,褐藻ウミトラノオのSSRsマーカーもしくはRADseqによるSNPsマーカーでのSTRUCTURE解析で認識できた大きなまとまりをもとに,集団のデモグラフィックな歴史をより直接的に推定した。各種POP1,POP2,POP3の3グループの集団デモグラフィーをシンプルな4シナリオをもとに,コアレセントシミュレーションから実際の観察データを説明するのに最も適したシナリオを抽出した。たま,その最適シナリオの有効集団サイズおよび分岐年代の比を推定した。 ②RADseq解析では,より多くの海藻種の系統地理学的化解析により,日本近海に広域分布する海藻類の系統地理に関する法則性を探索することを目的に,紅藻フクロフノリおよび緑藻ミルで実験をおこなった。しかし,RADseq解析自体は成功したものの,その後の系統地理学的解析で,明瞭な遺伝構造が検出できなかった。現在,原因を解析中だが,複数の隠蔽種の存在が示唆されている。 ③環境適応分子進化に関する解析では,褐藻ヒジキの単層培養株を世界で初めて単離し,Imaging-PAMとDOメータを用いて水温に関する生育特性を調査した。沖縄,館山,函館のヒジキにおいて,高温および低温での光合成活性の違いや,チリングテストによる低温・高光量からの回復を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標の約7~8割の達成率であり,区分(2) おおむね順調に進展している,とした。
日本全域に生育する種のRADseqによるSNPs情報の取得には,成功したが,系統地理学滴解析に明瞭な集団遺伝構造が検出されたなかった問題に関しては,現在,原因の追求をしている途中であるが,紅藻フクロフノリの場合,なんと5種もの隠蔽種の存在が示唆されている。これはこれで有益な新知見であり,種多様性の正確な理解に向け,新しい研究テーマの発掘となった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本近海に広域分布する海藻類の多種系アプローチによる比較系統地理学的解析をおこない,分布変遷史,個体群の遺伝的多様性の理解だけでなく,異なる環境への分布拡大に関与した環境適応分子進化の解明や、未来の分布域シミュレーションを達成するために,当該年度に関しては,①RADseq解析によるゲノムワイドのSNPsデータの取得と系統地理学的解析,②環境適応分子進化に関する解析を進める。 ①RADseq解析によるゲノムワイドのSNPsデータの取得と系統地理学的解析では,紅藻マクサと紅藻オゴノリを行う。現在までに,採集,DNA抽出,DNA濃度測定を終え,さらに,昨年度の反省を踏まえ,全個体のrbcLgeneでの分子同定をおこなった。それをもとに,紅藻マクサと紅藻オゴノリと同定された個体のみで,RADseq解析によるゲノムワイドのSNPsデータの取得と系統地理学的解析をおこない,日本近海に広域分布する海藻類の系統地理に関する法則性を検出する。 ②環境適応分子進化に関する解析では,褐藻ヒジキに注目し,水温と光量に関する生育特性を理解する。現在単離できた沖縄株に加え,館山および函館産ヒジキでも単層培養株を単離し,,Imaging-PAMとDOメータを用いて水温に関する生育特性を調査する。これをもとに,RNAseqによる高温および低温での光合成活性の違いや,チリングテストによる低温・高光量からの回復の違いに関する遺伝子基盤を構築する。
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Causes of Carryover |
RADseq解析に関して,昨年度の反省を踏まえて,全サンプルrbcL geneでの分子同定を実施することにしたため,RADseq解析に出せなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RADseq解析を2種おこなう。
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Research Products
(5 results)