雌の配偶者選好性の変化と産子形質の関連：強化される負の頻度依存淘汰

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26440234
• Research Institution: Tokyo Gakugei University
• Principal Investigator: 狩野 賢司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40293005)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 性淘汰 / 配偶者選択 / 産子調節 / 性比

Outline of Annual Research Achievements

平成27年度は、卵胎生魚類グッピーを用いて、雌に提示した派手な雄と地味な雄の頻度による雌の配偶者選好性の変化、及びその後に派手な雄、あるいは地味な雄と雌を配偶させて、雌が産んだ子の数や性比に雄への選好性などがどのような影響を与えているか調査した。
平成26年度のデータを再解析した結果、実験開始時に生後150日以内の若い雌の方が提示した派手雄・地味雄の頻度に強く影響を受けること、及び提示した雄の派手さの個体差が雌の選好性に影響を与えていることが示唆された。そこで本年度は、派手さに個体差がある生きた雄の替わりに、派手な雄映像、及び地味な雄映像を用いることで、統一した派手な雄と地味な雄を雌に提示して実験を行った。
オレンジ色のスポットの大きな派手雄映像と、オレンジスポットの小さな地味雄映像の割合が5：1（派手雄偏り）、あるいは1：5（地味雄偏り）の雄グループ映像を、視覚刺激として雌に7日間提示して飼育した。その後、派手雄映像と地味雄映像を用いて、雌の配偶者選好性を計測した。次に、派手雄と地味雄映像の割合が逆転した雄グループ映像を提示して、同じ雌を7日間飼育した後、派手雄・地味雄映像に対する雌の選好性を計測した。
次に、実際にオレンジスポットの大きな派手な雄、あるいはスポットの小さな地味な雄と、雌を配偶させた。雌が雄と交尾したのを確認した後、雌は統一した環境で単独で飼育し、産子させた。そして、雌が産んだ子の数や性比と、派手な雄と地味な雄に対する雌の配偶者選好性や、派手雄映像と地味雄映像の割合を変えて提示したことによる雌の配偶者選好性の変化の関連を調査している。現在までに子の性比が明らかになるまで成長したサンプルの数は少ないが、雌が産んだ子の数や性比には大きな個体差が見られることから、雌の配偶者選好性の変化がこれらの産子形質に与える影響を明らかにできる見込みは高いと考えられる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成26年度に得られたデータを再解析した結果、実験に用いる雌の年齢や、雌に提示する派手な雄と地味な雄の個体差が雌の選好性に影響を与えることが示唆された。これらの結果は、本種の雌の配偶者選好性が様々な要因によって影響を受けることを示す大きな成果と考えられる。
これらの解析結果を受けて、平成27年度では雄に対する選好性がより鋭敏に変化する若齢の雌を用い、さらに雌に提示する雄の個体差の影響を排除するため、同一の派手雄映像と地味雄映像を用いて実験を行った。これらの要因の影響を最小限にすることにより、提示した派手な雄と地味な雄の割合の変化が、雌の配偶者選好性に与える影響を厳密に精査することができると期待される。また、現在までに雌が産んだ子の性比まで明らかになったサンプルの数は少ないが、子の数や性比には雌によって個体差があることから、平成28年度も引き続き同様の手順で実験を行い、サンプルの数を増やすことで提示した派手な雄と地味な雄の割合の変化が雌の配偶者選好性に与える影響、及びその結果として雌が産む子の数や性比に与える影響などを明確にできると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度からは、雄の派手さの個体差が雌の配偶者選好性に与える影響を排除するため、同一の派手雄映像、及び地味雄映像を用いて実験を行う方法を確立した。また、雌の年齢の差異による影響も最小限にするため、実験開始時生後150日以内の若齢の雌を用いるようにした。
平成28年度も引き続き同様の実験手法により、提示した雄映像が派手雄偏りであったか、地味雄偏りであったかによって、雌の配偶者選好性がどのように変化するかを調査する。また、その後、実際に派手な雄、あるいは地味な雄を雌を配偶させて産子させ、子の数や性比を計測する。十分な数のサンプルが得られたら、解析を行い、雌の配偶者選好性の変化と、雌が産んだ子の数や性比などの産子形質の関連を明らかにする。

Causes of Carryover

平成28年3月末に沖縄県で野生化グッピーの採集を行った。この際に採集に参加した人員が予定よりも1名少なかったこと、及び旅行シーズンにも関わらず早期割引で航空券が予約できたことから次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成28年度内に十分な数のサンプルを得るため、飼育環境の増強、及び飼育実験の補助などの謝金などを増やすことにより、さらに効率的に実験を進める予定である。