2014 Fiscal Year Research-status Report
花蜜分泌の非破壊的かつ継続的観察に基づく送粉報酬生産の解析
Project/Area Number |
26440237
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
川窪 伸光 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60204690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ツリフネソウ / 花蜜生産 / 非破壊的観察 / 花生態 / 特殊デジタルカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,以下の3つを目的として始めた。(1)花器を損傷破壊せずに花蜜の分泌量の測定する方法を確立し,(2)送粉者の訪花・吸蜜行動タイミングと対照しつつ,時間軸に沿って連続的に花蜜量の変化を記録して,(3)植物の花蜜生産の最適戦略を検討する。 現在までに,花器を損傷破壊せずに花蜜の分泌量の測定する方法の開発は,全天候型デジタルカメラの改造を含め,ほぼ終了している。H26年度は,その実践的運用を模索した。つまり,「いつ・どのくらい」花蜜が分泌・生産されているのかを詳細には把握することに挑戦し,サンプル数は十分とは言えないまでも,ツリフネソウにおいて質的にほぼ満足できるデータを得ることができた。 その結果,8月下旬から9月に開花したツリフネソウの花は,岐阜県萩原町位山周辺(標高700~800m)では,早朝5-6時に花蜜が4マイクロリットルほど準備されていることが明らかになった。ただし,この蜜量は株によってかなり変異したため,生育環境を加味した,生産量の仕組みを検討する必要があった。 さらに,夜間には,蜜量の増加は見られず,早朝の4マイクロリットルは前日の9時頃には分泌を終えたまっていることが判明した。 これらの結果は,破壊されずに生きた自然状態の花の生態として,はじめて把握された重要なデータとなった。 H27年度では,データの質を落とさずサンプル数を増やす予定である。またさらに,その花蜜量の増減を,「どのように」変化するのかを明らかにするために,花蜜量の主たる減少原因である訪花者の採食行動と記録・対応させて,その減少量と頻度などを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的とした,以下の3項目のうち,最初の(1)でほぼ満足できる結果を得た。(1)花器を損傷破壊せずに花蜜の分泌量の測定する方法を確立し,(2)送粉者の訪花・吸蜜行動タイミングと対照しつつ,時間軸に沿って連続的に花蜜量の変化を記録して,(3)植物の花蜜生産の最適戦略を検討する。また(2)についても見通しが立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ツリフネソウ花蜜の増減のパターンをより正確に把握するとともに,トラマルハナバチの訪花タイミングと,その時の吸蜜時間を重ね合わせて,全体像を解析していく。また,花への袋がけを行い,花蜜分泌の潜在的能力と温度や湿度など外部環境への反応を解析する。その上で,袋がけで通常よりも集積した花蜜量に対して訪花者がどのように振る舞うかなども解析する。 さらに,破壊的ではあるが,花蜜の糖度の測定も並列して行うことも考えいる。
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