2015 Fiscal Year Research-status Report
広食性昆虫の捕食対象植物器官拡大における可塑性と適応度の侵入プロセスにおける役割
Project/Area Number |
26440243
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐伯 順子 九州大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (40646858)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 広食性昆虫 / 進入害虫 / ホスト植物拡大 / 捕食行動 / 可塑性 / 飛翔特性 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、異なる植物器官を捕食する個体の適応および可塑性について検証し、侵入プロセスにおける役割を解明することである。そこで、米国に外来種として侵入し、農業に大きな打撃を与えている日本在来種のマメコガネ(Popilliajaponica Newman)を用いて、上記目的を達成することとした。マメコガネは、日本では主に植物の葉を捕食しているが、米国では果実の捕食が顕著である。これに着目し、日米のマメコガネ個体群の比較・検証を行っている。 異なる植物器官(果実、葉)の捕食時の適応度について、2014年度の解析をさらにすすめたところ、果実を捕食する個体は、葉を捕食する個体よりも飛翔距離を延ばしていることがわかり、果実捕食が分布拡大に貢献していることを示唆している。他方で、果実を捕食する雌は、葉を捕食する雌よりも蔵卵数が多いことがわかった。これはたんぱく質をより多く含む葉の栄養成分が、糖をより多く含む果実の栄養成分より、卵の成熟に相応しいと考えられる。また、葉を捕食している個体のほうが、果実を捕食している個体より有意に個体体重が多かった。これらの解析より、果実の捕食は、より長い飛翔距離により適応度を高める一方、個体体重と蔵卵数の減少というコストがあることがわかった。この結果は、北米に侵入した個体群における果実捕食の役割について、新たな議論を提供すると考えられる(論文投稿準備中)。 今年度の実験として、果実・葉のどちらかの捕食経験のある個体に対するチョイステストを行った。この実験で得られたデータに関して、現在解析中である。また、果実または葉を捕食している個体のRNAの発現差異を検証するために、果実または葉の捕食を3日間行っている雌雄各平均25個体の脳と腸(計204検体)を採集し、保存液に浸漬させた。現在保存液中の各部位からRNAを抽出中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度に計画していた実験の実行・データ収集について、概ね順調に行うことができたが、その解析に少々遅れが出ている。日本と米国のマメコガネ個体群の遺伝的多様性の調査を目的として、2014年度に日本・米国で採集し、DNA抽出した個体について、現在、ミトコンドリアと核のプライマーを用いて増幅作業を行っているが、最適な増幅条件を得るのに時間がかかった。特に、ミトコンドリアから得ようとしている配列が比較的長いため、なかなか増幅できなかったことが理由であると考えれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、上記DNAの配列を特定し、日本と米国の個体群の比較を行う。得られた結果を、9月に米国フロリダ州行われる第25回InternationalCongress of Entomologyで発表予定である。また、果実と葉を捕食中の個体のRNA発現比較を行うために、現在進行中であるRNA抽出を完了し、配列比較を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度に完了を目指していた、DNAの増幅および配列決定作業の工程に当初の予定よりも遅れが生じたため、それら作業に伴う予算が執行されなかったためである。これは、適切な増幅条件の決定が難航したため、一次作業を中断したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、適切な増幅条件が見出せたため、作業の進捗も安定している。したがって、次年度分となった予算は、DNA増幅および配列決定のために執行する予定である。また、翌年度分として請求している予算は、RNAの解析および栄養分析で執行する計画である。
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