2015 Fiscal Year Research-status Report
変わりゆく地球気象の中を旅する鳥たち:気候変動が渡り鳥の移動に及ぼす影響の評価
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26440245
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 典之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60436764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 広芳 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任教授 (10111486)
島田 泰夫 一般財団法人日本気象協会, 事業本部環境事業部環境影響調査室, 主任技師 (70621077)
万田 敦昌 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (00343343)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気候変動 / 渡り鳥 / 長距離移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は近年進展著しい気象解析研究の成果を援用し、遠隔追跡研究から得られたデータと統合して、渡り鳥の移動に気象条件がおよぼす影響を推定・予測することを目的としている。平成 27 年度の実施計画は、基本的に平成 26 年度のものを踏襲し、(1) 近過去~現在の気象解析および移動時期・経路との関連を探る統計的解析、(2) GPS を利用した渡り鳥の遠隔追跡、(3) 気候変動が渡り鳥の移動におよぼす影響の予測を実施するものであった。 このうち (1) については、主な対象のひとつであるハチクマについて解析を完了し、現在論文が査読中となっている(1回目改訂稿投稿中)。この論文で我々は「ある地域に時空間分布する移動に好適な生物・非生物資源(今回は風況)」を Migratory Niche という概念として新たに提案し、その時空間分布の中を移動することが適応的であると考えた。今回ハチクマでは風況を Migratory Niche とし、ニッチモデリングにより主に東シナ海海域の春・秋の好適環境分布を推定し、どのような移動に有利な風資源がその地域のいつ、どこに分布しているのかを明らかにした。今後、類似の手法を別の対象種であるサシバでも実施する予定である。 (2) については、平成 27 年度に追跡開始した個体が平成 28 年度に国外越冬地から帰還する。それを再捕獲し、データを回収する予定である。(3) については、気象予測モデル群である CMIP5 からデータを取得しており、現在、解析を進めている。その結果は平成 28 年度に公表する予定である。 この他、本課題の重要性を広くアピールするために、国際誌に特集号を編む準備を進めている。これは平成 29 年 1 月に発行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の気象条件と渡り経路に関する解析はハチクマで順調に完了し、論文が査読中である。もう一方のサシバでも類似の手法を採用できるので、論文化まで長時間かからず進むと期待される。渡り鳥が受ける気候変動の影響の将来予測については、解析を進めているところであるが、気象予測データの取得と整備はおおむね終えることができ、時間を要する大規模データの処理には目処がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、課題を推進していく。最終年度となる今年度は特に成果の発表、論文化に注力し、極力年度内に多くの論文を投稿・出版させることを目指す。
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Causes of Carryover |
主に分担者(島田)の担当部分にして、外部協力者への調査協力時期に計画からズレが生じたため、予定していた謝金支払いを遅延させた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遅延した計画を H28 年度までに実施、使用する。
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Research Products
(1 results)