2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26440249
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中嶋 康裕 日本大学, 経済学部, 教授 (50295383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 慎介 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70347483)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 同時雌雄同体 / 性的共食い / 配偶行動 / ウミウシ / キヌハダモドキ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主な研究対象であるキヌハダモドキの共食い行動の発達を確認するため、発達段階ごとに共食い行動の発生頻度の変化を研究した。神奈川県葉山海岸では、体長6-9mm程度の最小サイズの幼体が秋に出現し、冬季から春季にかけてゆっくり成長を続けて亜成体(外部から生殖口がはっきりと確認でき、同種個体に出会うと交接器を伸張させるが長さが不足して交尾には至らない段階)に達する。その後、5月になって性的に成熟して交尾を行える個体が出現した。幼体を同種他個体と出会わせると、接触した途端に(主に接触された側ではなく接触した側から)体を反転させて逃避した。しかし、一部(10%以下)の個体は逃避せず、出会った相手を攻撃した。さらに成長して体サイズが大きくなるとともに、逃避ではなく攻撃を選択する個体が増加し、15mm程度の(成熟直前の)亜成体では20%程度が攻撃した。攻撃された個体は反撃することもあれば、逃避することもあった。また、いったん逃避を行い始めた個体が再反転して相手を攻撃することも観察された。一方、20mm程度で成熟した個体は出会うと必ず攻撃し、逃避した個体はいなかった。この結果、成体どうしの出会いではどちらか一方が必ず共食いされることとなった。これまでによく研究されているカマキリやコガネグモの性的共食いの発生頻度が低かったことに比べると、これは際立った違いである。 また、内部生殖器系の形態観察を行ったところ、近縁種とは異なり、精子貯蔵器官である受精嚢の壁が筋肉質ではなく著しく薄いことが分かった。これは、大型の交接器を体内に収納するための適応であると考えられるが、詳しくは次年度以降に組織学的研究を行って解析する予定である。 DNA実験については、父子判定を行うためのプライマーの開発を行ったが、キヌハダモドキのDNAの特異性のため開発に時間を要し、まだ十分な数を確保できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
配偶・摂餌(共食い)行動の観察については予定通り進行しているが、期待したほどの個体数を採集できなかったうえ、行動の多様性が予想よりも高かったため観察例数がまだ不足しているので、さらに追加観察を行う予定である。生殖器系の形態観察は予定通りほぼ完了した。 一方、DNA実験に関しては、これまでに扱った他のウミウシに比べても極めて特殊な性質を持つようで、予定していた数のプライマーを確保するには至っていない。これらを総合的に判断すると、研究の進捗は予定よりも若干遅れてはいるものの、大幅な遅れではなく許容範囲であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
観察に必要な個体数の確保については、これまでの神奈川県葉山海岸に加えて、千葉県の館山海岸でも採集を行うことを計画している。予備観察により、この両地域は対象種の成長状況が異なることが明らかになっているため、両地域で採集することで観察期間を延長することができると考えている。また、組織学的観察については、東京海洋大学館山ステーションの須之部准教授の協力を得て、今冬に行う予定にしている。 DNA実験については、PCRの条件設定をさまざまに変えて実施する以外に解決の早道はないと考えている。しかし、これには労力と(実験試薬購入の)費用の点で限界があり、予定していたプライマー数を減らして研究を進めることも考えている。 主な研究対象種であるキヌハダモドキに似た行動様式を持つ近縁種との比較研究に関しては、共食いはしないが同属他種を襲うヒメキヌハダや、琉球大学瀬底研究施設付近で発見した大型の交接器を持つ未記載種を対象として、行動及び形態の観察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
DNA実験の進行が予定より遅れたため、試薬の購入額が少なくなった。また、沖縄での採集回数が予定より少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度のDNA実験で試薬を購入する。沖縄での採集回数を増やして、研究対象個体数を確保する。
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