2016 Fiscal Year Research-status Report
円網性クモにおける色彩変異の進化をもたらす生態的要因の解明
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26440251
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中田 兼介 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80331031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁宮 悠介 長崎総合科学大学, 総合情報学部, 准教授 (00399213)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 体色 / 種内変異 / 造網 / 進化 / 種間比較 / 円網 / クモ / 配偶頻度 |
Outline of Annual Research Achievements |
親子間で体色を比較して遺伝性を調べる飼育実験を行った。ギンメッキゴミグモについては春世代を7例、夏世代を5例、越冬世代を1例追加し、前年度までの結果と合わせ32例(他に人工交配による10例)とした。ミナミノシマゴミグモは、前年度までの自然交配による5例に加え、人工交配による2例、孵化個体を冷蔵した例を1例追加した。ギンナガゴミグモについては2卵嚢を飼育したが、成熟させることができなかった。 餌昆虫の衝突率について、去年行った野外ビデオ撮影と同じ方法で、6月から7月に実施した。これまでの解析により、ミナミノシマでもギンメッキ同様に、暗い体色の個体の方が高い餌衝突率を示すことが分かった。他に、餌衝突点の網中心からの距離も、暗い個体の方が短いことが分かり、明るい個体が餌昆虫に回避されている可能性が示された。 ギンメッキゴミグモの網に対するショウジョウバエの飛行経路推定のため、二台のカメラによる同期撮影を行った。10分の映像を160本撮影し、10例の衝突映像を得ることができた。撮影した動画からショウジョウバエの座標を自動的に検出する方法を外部研究者に相談したが対象が小さすぎで不可能と判明した。 ショウジョウバエを用いてギンナガゴミグモとギンメッキゴミグモの体色の誘引効果の強さを調べるため、T字迷路を用いた選択実験を行った。その結果、誘引効果に種間で違いは見られなかった。一方、ギンメッキゴミグモにおいて造網速度と対捕食者防御の関係について明らかにした。 ギンメッキゴミグモでみられた垂体切除によるメスの1回交尾について、ギンナガゴミグモで同様の観察を行ったところ、垂体切除の率がギンメッキと比べて低いことを示唆する結果を得た。一方、交尾済みのメスはオスに対して高い攻撃性を示したが観察数が十分ではないため、ギンナガにおける交尾回数について確かな結論を得ることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度のデータから示唆された、ギンメッキゴミグモの体色決定における表現系可塑性の季節変化の可能性について、飼育による親子間の体色比較サンプルを増やすことを計画していた。これについては、一定の進捗を見たが、未だサンプル数が充分であるとは言えない。このことから、計画していたシミュレーションモデルを用いた、体色変異を持った個体群の体色頻度の変化動態についての研究は成果を得ることができなかった。とはいえ、基礎的なモデルの作成は終了しており、遅れは軽度であると判断している。 ギンナガゴミグモの餌誘引能力の調査、及び野外での繁殖時期の推定のためのサンプリング調査についてはは順調に進捗したが、一回交尾の可能性の検証及び飼育については、一定の成果を得たが、確かな結論を得るには至らなかった。 一方、ミナミノシマゴミグモの採餌生態の調査から、本種においてもギンメッキゴミグモでこれまで見られていたのと類似の体色と餌捕獲量との関係を示すデータを得た。また、餌捕獲量のみならず、網内での餌捕獲位置がクモの体色によって変わることを示すデータを得ることにも成功し、このデータは明るい体色の個体が餌から避けられていることを示すという点で、これまでの知見と整合的である。この観察は、これまで予期していなかったものであり、予想外の進捗を得たものと評価している。 ギンメッキゴミグモに対する餌の飛行経路解析については、室内における動画データの取得には成功したものの、これからショウジョウバエの位置データを自動解析することは難しいことが判明した。そのため、手動で座標を検出して三次元的な飛行経路を推定する必要がある。また、衝突例のほか、長時間の飛行が見られた映像でも飛行経路の推定を行っていく必要もあるが、この作業を年度内に終わらせることができなかった。 これらを総合して、本年度の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプル数が充分でない調査項目について追加調査を行い、その結果に基づいてシミュレーション解析を行う。また、ギンメッキゴミグモに対する餌の飛行経路解析について、自動解析をあきらめることとし、時間はかかるけれども、手動で解析を進めることとする。
また、これらの結果について論文を作成し、公表する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の遅れに伴い、論文の作成が予定していたものよりも少なく、英文校閲費の出費が少なかった。また、出席して発表を予定していた日本生態学会第64回大会について、勤務校の卒業式などと日程が重なり、参加できなかった。そのため、旅費として予定した額よりも少ない額しか使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文作成時の英文校閲費と、国内学会旅費として使用することを計画している。
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Research Products
(4 results)