2015 Fiscal Year Research-status Report
運動様式・種目の相違が女性の温熱的環境適応能に及ぼす影響
Project/Area Number |
26440264
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
勝俣 康之 大阪国際大学, 人間科学部, 講師 (80459130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 幸雄 大阪国際大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00300301)
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
上田 博之 大阪信愛女学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 女性 / 陸上長距離選手 / 陸上短距離選手 / 水泳選手 / アセチルコリン誘発性発汗 / 皮膚温度感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,女子の大学陸上競技短距離選手・長距離選手・水泳選手および非運動鍛錬者に対し,(1)皮膚温度感受性テスト,(2)イオントフォレーシス発汗テストを実施し,運動種目・様式の相違が体温調節機序の入力系・出力系・効果器系に及ぼす影響を検討した.(1)皮膚温度感受性テスト(入力系の指標):熱流束温冷覚閾値計を使用し,身体8部位(前額・胸・背・前腕・手背・大腿・下腿・足背)の冷覚閾値と温覚閾値を測定した.冷覚閾値の熱流束差では,手背で非運動鍛錬者が短距離・長距離選手より有意な低値(鋭敏な冷覚を意味する)を示したが,他の身体7部位では4群間で有意な差はみられなかった.温覚閾値の熱流束差では,下腿で長距離選手が非運動鍛錬者・短距離選手より有意な高値(鈍感な温覚を意味する)を示したが,他の身体7部位では有意な群差はみられなかった.(2)イオントフォレーシス発汗テスト:軸索反射性(交感神経節後線維の要素を反映する:出力系)の発汗量は前腕で非運動鍛錬者が他の3群より有意に低く,大腿で長距離選手が他の3群より有意に高かったが,いずれの部位でも3群間では有意差はみられなかった.直接刺激性(汗腺それ自体の要素を反映する:効果器系)の発汗量は前腕・大腿とも非運動鍛錬者<短距離選手=水泳選手<長距離選手の関係がみられた.これらの発汗量の群差は,活動汗腺数ではなく,単一汗腺あたりの汗出力の相違に起因した.以上の結果,女子において皮膚の温度感受性からみた入力系は運動種目・様式のみならず,運動トレーニングそれ自体によっても修飾されなかったが,軸索反射性発汗からみた出力系および直接刺激性発汗からみた効果器系には運動トレーニングそれ自体の効果とともに,運動種目・様式の相違が示唆された.効果器系の運動種目・様式差はコリン感受性and/or汗腺サイズに起因することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は研究実施計画通り,女性の陸上長距離選手,陸上短距離選手,水泳選手,非運動鍛錬者の皮膚の温度感受性とアセチルコリン誘発性発汗を比較し,運動トレーニングの効果のみならず,陸上運動種目の相違(長距離選手 vs. 短距離選手)および運動様式の相違(水中運動 vs. 短距離選手)に伴う入力系,出力系,効果器系への影響を検討できた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究で見出した,発汗反応における効果器系で観察された運動種目・様式差を身体部位差の観点から詳細に検討する.すなわち,女性の陸上競技中長距離選手・短距離選手,水泳短距離選手に対し,同一の心拍数になるトレッドミル走行運動を負荷し,その間身体多部位【前額,頬(右),胸部(左と中央),腹部(右と中央),背(右と中央),腰部(右と中央),脇腹部(右),上腕部(右),前腕部(右),大腿部(右の前面と後面),下腿(右の前面と後面)】の局所発汗量をシート法で測定し,身体部位差の観点から女性の運動種目・様式の相違が女性の発汗反応に及ぼす影響を検討する.さらに実験中,深部体温とともに背部発汗量(カプセル換気法)を連続的に測定して発汗開始時深部体温を求め,運動種目・様式の相違が体温調節機序の中枢系に及ぼす影響を検討する.中枢系の結果と27年度実施した運動種目・様式の相違に伴う入力系,出力系,効果器系の結果と考え合わせて,運動様式・種目の相違が温熱的環境適応能に及ぼす影響機序を全身協関的視点から検討する.
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Causes of Carryover |
データ収集後の解析が遅くなり,学会発表できなかった.そのため,旅費の使用が年度内で間に合わなかった.また,物品等の購入が間に合わず,他の実験用に購入していた物品を使用して実験を実施した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会発表時の旅費として,さらに遅れていた物品購入に残金をあてる.
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