2015 Fiscal Year Research-status Report
高所環境における経済速度と体温・体液調節能からみた環境適応能
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26440268
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Research Institution | Mount Fuji Research Institute, Yamanashi Prefectural Government |
Principal Investigator |
堀内 雅弘 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (50310115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安陪 大治郎 九州産業大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10368821)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高所 / 経済速度 / ロコモーション / エネルギー消費量 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、実験室での実験と実際の富士登山でのフィールド実験を行った。実験室においては、主に常圧低酸素環境が歩行時のエネルギー消費量と経済速度におよぼす影響を検証した。健康な成人男性12名を対象にして、吸入酸素濃度:21%(平地)、15%(標高約2700mに相当)、11%(標高約5000mに相当)の三条件で実験を行った。被験者は、各酸素濃度環境において、歩行速度時速2.4kmから、段階的に速度を増加させ、時速5.9kmまでの6段階の歩行をトレッドミル上で行った。各段階の歩行時間は4分間、すなわち歩行時間が合計24分間であった。呼気ガス諸変量から計算されたエネルギー消費量に、酸素濃度の影響は認められなかった。エネルギーコストを最小限にする経済速度は、21%と15%酸素レベルの間に有意な差は認められなかったが、11%酸素濃度で有意に低下した。また、各人の経済速度は近赤外線分光法で評価された脱酸素化ヘモグロビンと有意な相関関係が認められた。これらの結果は、経済速度は標高5000mレベルで初めて低下を示し、各人の経済速度は一部筋での酸素消費に関連していることが示唆された。 フィールド実験においては、成人男女17名を無作為に真水のみ摂取する群と脱水予防のための経口補水液を摂取する群の二群に分けて、富士登山を行った。登山中全行程に亘り、心拍数と三軸加速度計によりエネルギー消費量を測定した。また、登山前、山小屋宿泊時、および下山後に尿サンプルを採取した。その結果、経口補水摂取群の心拍数は登山中有意に低く抑えられた。尿サンプルの分析結果から、この要因は、経口補水液に含まれる、ブドウ糖とナトリウムの併用により、脱水が抑えられ、静脈還流量が維持され、結果として心拍数の増加が抑制されたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
常圧低酸素環境が歩行時のエネルギー消費量に及ぼす影響に関する実験は、順調に進んだもの、実際の富士登山では気温も低下するため、この複合刺激(低酸素+寒冷)が歩行時のエネルギー消費量に及ぼす影響を検討する必要がある。しかしながら、実験環境が厳しいものとなるため、被験者の十分な確保がまだできていない。また、寒冷環境の設定を行うのに、当研究所の人工気象室を使用しているが、温度を一定にコントロールすることは順調にできているが、湿度を一定にコントロールすることに、まだ精度が不十分である。このため、本実験になかなか移行できないでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、寒冷環境を適正に制御できるような準備が整いつつある。また、被験者募集を以前より幅広く行うことで、十分な数の被験者が確保できるのではないかと考えている。本年度は、これらの環境整備を踏まえて、以下の4条件の実験を予定している。1)常酸素+常温、2)常酸素+寒冷、3)低酸素+常温、4)低酸素+寒冷の四条件で実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画は比較的順調のこなせたため、追再実験を行う必要がほとんどなかった。また、他大学と共同で実験を行うことができたため、消耗品や謝金の出費を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年同様、完遂できていない実験を効率よく行うほか、昨年度実験成果を国際学会で発表するため、その旅費の一部に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)