2014 Fiscal Year Research-status Report
コムギ春播性遺伝子Vrn-D4のマップベースクローニングと機能解析
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26450005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西田 英隆 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30379820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コムギ / 春播性遺伝子 / Vrn-D4 / テロソミック / シンテニー / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、TD(F) (春播性Vrn-D4保有)と合成コムギ系統CS(5D5402) (秋播性vrn-D4保有)の交雑に由来する大規模F2集団(1591個体)を用いてVrn-D4のマッピングを行い、Vrn-D4が5D染色体動原体近傍の0.09cM領域に座乗することを明らかにした。しかしながら、Vrn-D4は5D染色体短腕及び長腕のDNAマーカーと共分離したために、座乗染色体腕の特定と座乗領域の十分な絞り込みができず、候補遺伝子の特定に至っていなかった。 そこで本課題では、はじめに座乗染色体腕を特定することを目的として、Chinese Spring(秋播性vrn-D4保有)のナリテトラソミック系統N5DT5BとTD(F)(春播性Vrn-D4保有)の交雑後代(F2集団192個体及び次代F3系統)において、5Dモノテロソミック及び5Dダイテロソミック個体を選抜し、正常個体と出穂期を比較した。その結果、保有する5D短腕(春播性Vrn-D4が座乗)の数によって出穂期が異なることが明らかになり、Vrn-D4が座乗する染色体腕が短腕と特定できた。 次に、コムギと比較的近縁であるBrachypodiumとのシンテニーを利用し、コムギVrn-D4領域と対応する1Mbの領域を解析したところ125個の遺伝子が存在し、この中で出穂期に影響を及ぼすと期待された転写因子及び発生関連遺伝子は10個であった。この中で、コムギゲノム配列のVrn-D4領域に存在したものはTaAGL31のみであり、Vrn-D4の候補遺伝子であることが示唆された。しかしながら、TD(F)と秋播性vrn-D4保有系統の間で配列変異を見出すことはできなかった。 さらに、TD(F)とTD(D)(春播性Vrn-A1保有)、TD(B) (春播性Vrn-A1保有)、TD(E) (春播性Vrn-A1保有)、CS(Hope7B) (春播性Vrn-B3保有)のF2集団から、保有する春播性遺伝子が異なる個体群(各集団4種類)を選抜し、無春化・長日条件で栽培した。その結果、Vrn-D4は他の春播性遺伝子との相互作用が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Vrn-D4は動原体近傍の0.09cM領域に座乗することから、F2集団の規模を拡大してマッピングを継続しても、多数の組換え型個体を効率的に獲得することは容易でないと予想された。そこで本課題では、5Dのテロセントリック染色体を保有する個体を作出して出穂期への影響を解析し、Vrn-D4が座乗する染色体腕が5D短腕と特定することに成功した。これにより、Brachypodiumとのシンテニーを利用した候補遺伝子の推定が早く進展し、候補遺伝子がTaAGL31であることが示唆された。しかしながら、候補遺伝子の特定には至っておらず、また他に候補となる遺伝子が存在する可能性も残されており、今後も候補遺伝子の特定に向けて解析を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
候補遺伝子であるTaAGL31について、秋播性Vrn-D4と春播性vrn-D4の間で塩基配列多型を探索する。多型が見出されれば、過去の研究でVrn-D4遺伝子型が明らかにされている遺伝資源コレクションを供試し、塩基配列多型とVrn-D4遺伝子型との対応関係を確認する。一方で、ゲノム配列を利用しつつ、Brachypodiumには存在せずコムギにのみ存在する遺伝子を探索し、Vrn-D4の候補遺伝子となり得るかどうかを解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は、大規模な分離集団を用いたVrn-D4のマッピングよりも、Brachypodiumとのシンテニーを利用した候補遺伝子の解析を優先させたため、試薬等の消耗品の使用が当初の計画よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、候補遺伝子の探索(シーケンス解析)やその確認(分離集団を用いたマーカーとの連鎖解析)を行うため、多くの消耗品を使用する予定である。
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