2014 Fiscal Year Research-status Report
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26450008
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
岩崎 行玄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (20193732)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イネ / 種子形 / 粒形変異体 / 3量体Gタンパク質 / ブラシノステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
短粒変異体srs2、srs4、srs6について原因遺伝子の単離を目指し、遺伝解析を進めている。srs2はポジショナルクローニングにより、原因遺伝子の候補領域を第10染色体の約700kbまで絞り込んだ。次に、srs2について次世代シークエンサーによる全ゲノム配列の解読を行い、この候補領域内のSNPを検出した結果、Os10g0571300(プロテインキナーゼ様タンパク質)内にナンセンス変異を引き起こすSNPが検出された。この遺伝子は、シロイヌナズナBRASSINOSTEROID-SIGNALING KINASE 2: BSK2 (ブラシノステロイドシグナル伝達キナーゼ2)のオルソログと考えられた。ブラシノステロイドはこれまでにイネの種子形に関与することが報告されている。さらに、遺伝子発現データベース(RiceXpro)によるとこの遺伝子は花器官における発現量が他の器官に比べて高い傾向にあることが示されている。以上のことより、Os10g0571300がsrs2の原因遺伝子である可能性は十分に高いと考えられるため、野生型Os10g0571300をsrs2変異体に導入し、相補性検定を行う準備を進めている。 srs4及びsrs6については、次世代シークエンサーを用いて迅速に突然変異体の原因遺伝子を同定するため、MutMap+法を試みた。しかしながら、原因遺伝子の存在を示す有意なピークを検出することはできなかった。この原因として、参照配列として用いた野生型が、変異体作成時の親(変異原処理を行った野生型)と異なっており、遺伝背景の違いによる無関係な遺伝子多型が解析結果に影響したものと考えられる。この対応策として、今回MutMap+法で使用した野生型の全ゲノムの塩基配列を決定後、QTL-seqを考えており、材料の準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短粒変異体srs2、srs4、srs6の原因遺伝子の単離を目指し、遺伝解析を進めている。srs2についてはポジショナルクローニングと次世代シークエンス解析によって、候補となる遺伝子を特定できたので、形質転換による相補性検定を開始した。この変異体解析は順調に進んでいる。srs4、srs6については、次世代シークエンスデータを用いた解析方法の1つ、MutMap+法による遺伝子単離を試みたが、解析材料の影響により、候補遺伝子は同定できなかった。この結果を考察し、MutMap+法に用いた解析データを活用できる別の解析方法であるQTL-seqを行う準備を始めた。この解析には、現在所有している解析データに加えて、野生型の全ゲノム配列のみが必要であり、ゲノム抽出用の材料を生育中である。 原因遺伝子の単離後、速やかに遺伝子の機能解析を進めるための二重変異体作は、順調に進められている。形態学的解析より、短粒変異体srs2、srs4、srs6、イネ3量体Gタンパク質αサブユニット欠損変異体d1は種子の細胞数が減少することによる短粒変異体、ブラシノステロイド生合成および受容変異体と、これまでに遺伝子の単離ができているsrs1、srs3、srs5は種子の細胞長が減少することによる短粒変異体である。大枠は、2重変異体の解析により、上記すべての粒形変異体間の上位性を調べ、種子形形成機構の理解を深めることにある。加えて、srs2(細胞数変異体)はブラシノステロイドシグナル伝達キナーゼ2のオルソログと推定されている。現在までの所、ブラシノステロイドシグナリングは、種子形に関しては細胞長変異体に分類されているが、srs2の成果如何では、ブラシノステロイドシグナリングは細胞数と細胞長の両者を制御することを提示できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
srs2については本年度中に相補性検定により原因遺伝子の同定ができる予定である。この成果を受けて、イネ短粒変異体Gタンパク質αサブユニット欠損変異体d1やブラシノステロイド関連変異体、これまでに遺伝子の単離ができているsrs変異体との二重変異体の表現型解析を行うことで、種子形制御におけるsrs2遺伝子の役割を明らかにする。srs4、srs6については、野生型の次世代シークエンサーによる全ゲノム配列決定を行い、QTL-seqを行う。その結果、原因遺伝子が特定でき次第、形質転換による相補性検定に用いるコンストラクションを行い、遺伝子単離を目指す。 申請書に記載した3種類の短粒変異体に加えて、次世代ゲノム基盤プロジェクト(RBS2001)(農水省)を進める過程で、粒形関連遺伝子の候補として、Os03g0840800 (ホスホリパーゼDデルタ2) を見出した。この遺伝子内にトランスポゾンTos17が挿入されている系統は、大粒表現型を示す。そこで、この材料についても相補性検定により形質復帰が確認されれば、新奇粒形制御遺伝子を提示でき、粒形制御機構の理解を深めると期待できる。この変異体は、細胞数を制御するか、細胞長を制御するかは不明なので、形態学的解析を行う必要がある。農水省プロジェクトは昨年度で終了しているので、この遺伝資源を、本プロジェクトの研究計画に加え、研究の厚みを増したい。
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