2014 Fiscal Year Research-status Report
アフリカにおける陸稲栽培の安定化に資するストライガ抵抗性品種作出の基盤構築
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26450019
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鮫島 啓彰 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (50580073)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ストライガ / 陸稲 / 抵抗性品種 / NERICA / 安定性 / 種子密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、サブサハラアフリカ地域に分布する根寄生雑草ストライガ(Striga hermonthica)に対して安定した抵抗性を示す陸稲品種作出につながる知見の収集を目的としている。 平成26年度は、これまでに選抜された抵抗性品種UmgarとNERICA5の抵抗性の持続性を確認するため、異なるストライガ種子密度(0, 0.84, 1.68, 2.52 seeds/cm3)でイネを栽培した。ストライガ種子密度が高いとイネ根とストライガの接触が増え、イネ品種の持つ抵抗性メカニズムを突破するストライガ個体数が増えると仮定した。 ストライガ感受性品種のNERICA4, NERICA13, Kosti2では、1.68 seeds/cm3でストライガ出現数が最大になり、2.53 seeds/cm3では出現数が低下した。これらの品種の生育(地上部乾物重)は、種子密度によらず、寄生を受けない場合の12~28%と大きく減少した。土壌中のストライガ種子密度がある水準以上に増加してもストライガ出現数の増加やイネの生育の低下が伴わない理由として、ストライガ寄生数の増加に伴いストライガ個体間の競合が大きくなること、および宿主の生育が抑制されストライガへの養水分の供給が減ることが考えられる。したがって、本実験の2.53 seeds/cm3は十分に高いストライガ種子密度であると判断した。 このような条件下で、UmgarとNERICA5では、種子密度によらずストライガ出現数がほぼ一定であり、地上部乾物重が寄生を受けない場合の55%以下に低下することはなかった。以上の結果から、土壌中のストライガ種子密度が増加した場合も、UmgarとNERICA5の抵抗性は安定していることを確認した。 次年度以降の研究のため、イネに寄生したストライガから種子を回収した。また、交配試験によりいくつかの交配種子を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に予定していた宿主からストライガへの13Cの転流の調査が、サンプル量が十分に確保できなかったため遂行できなかった。また、UmgarとNERICA5の交配も試みたが成功しなかった。しかし、その他に予定していた、ストライガ種子密度の影響の調査、イネに寄生したストライガ種子の採取、感受性品種NERICA4とUmgarおよびNERICA4とNERICA5の交配種子の作出は完了したことから、やや遅れているの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
根分泌物のストライガ種子発芽刺激活性が低い宿主品種の周りでは、土壌中のストライガ種子の発芽率が低下し、宿主根と接触する発芽ストライガ個体数が減少する結果、寄生成立数が抑制されると考えられている。このタイプの抵抗性は接触前抵抗性と呼ばれている。 平成27年度は抵抗性品種のUmgarとNERICA5の接触前抵抗性を解明するために、両品種の根分泌物の活性の評価を行う。根分泌物は水耕栽培中の培養液の回収および土耕ポットから多孔質素焼管を用いて回収する。別の調査によりUmgarとNERICA5は接触後抵抗性を持つことは明らかになっているため、両品種が接触前抵抗性を持っていれば、複数の抵抗性メカニズムを持つ品種として貴重な遺伝子資源であると判断できる。 UmgarとNERICA5のストライガ抵抗性の持続性を確認するため、イネに寄生したストライガから採取した種子を用いて、両品種の抵抗性を調査する。同時に、スーダン国内で新たに採取した異なるストライガ集団を用いた評価も行い、両品種の抵抗性に対するストライガ集団の影響を明らかにする。 前年度に作成した交配種子を栽培し、F1種子であることを確認後、F2種子を採取する。また、UmgarとNERICA5の交配も再度行い、F1種子を得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
外部に受託分析を依頼する予定であった13Cの質量分析が、サンプル量不足により行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抵抗性品種に寄生するストライガの個体数は少ないうえ、生育も旺盛ではないことから、13C分析に必要なサンプル量を確保するのは困難であると判断した。次年度使用となった経費は、宿主とストライガの導管結合の完成を13C分析に頼らずに判断するために、ストライガの生育を詳細に観察する実験に使用する。
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Research Products
(5 results)