2014 Fiscal Year Research-status Report
コムギの枯れ熟れ様登熟不良の原因を解明し,改良施肥法で症状を緩和させる
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26450021
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
荒木 英樹 山口大学, 農学部, 准教授 (90346578)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コムギ / 枯れ熟れ様登熟不良 / 窒素代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,コムギの枯れ熟れ様登熟不良(登熟期に急激に茎葉や穂が枯死する登熟障害)が,登熟初期に根からの窒素吸収量が子実の窒素要求量に追い付いていないこと,および,それが葉のタンパク質や色素の分解を早め葉の黄化や枯死を促進することを示すとともに,根量や根の窒素代謝系を分析し,窒素吸収量が低下する原因を明らかにする.さらに,枯れ熟れ様登熟不良の発症圃では,登熟期に窒素飢餓が起きているかどうかを検証し,施肥設計を見直すことで発症による被害を最小化できることを示し,改良施肥法を作ることを目的としている. 平成26年は,現地試験地の中で,枯れ熟れ様登熟不良を起こしやすいとされるダイズ後作のミナミノカオリ圃場一筆を対象に,基肥と分げつ肥に窒素を施用せず穂肥以降の施肥を重点的に行う施肥法の効果を検証した.この圃場では,生育初期に過繁茂の傾向がみられ枯れ熟れ様登熟不良が起こる兆候が見られたものの,5月上旬以降に試験プロット外のコムギが倒伏してしまい,その影響で枯れ熟れ様登熟不良の発生程度などの調査ができなかった.予備圃場として調査していた別の圃場一筆(ダイズ後作のミナミノカオリを栽培)では,播種日が遅れたため生育量が低調となったが,軽度の枯れ熟れ様登熟不良とみられる千粒重低下が観察された.この圃場でのミナミノカオリでの茎葉サンプルを元に,葉身全窒素などを測定した.また,この圃場では,枯れ熟れ様登熟不良に対する耐性が異なる数品種を栽培しており,それらの発症程度を比較した結果,枯れ熟れ様登熟不良は子実タンパク質含有率が高い系統ほど重度に発症する傾向が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の試験では,主とした農家圃場で重度の倒伏が生じ,この圃場では想定していた試験ができなかった.ただし,予備として作成していた農家圃場において,計画通りミナミノカオリの茎葉サンプルを保存しており,それらの解析ができたことから,概ね計画通りの成果が得られた. この枯れ熟れ様登熟不良発症圃場では,元来地力が高いことに加え,ダイズ残渣の分解によるもとと考えられる窒素供給によって,穂数や一穂粒数が未発症地に比べて1.5倍程度高くなった.収量構成要素である粒数と穂数と千粒重から,枯れ熟れ様登熟不良が発症した状態での収量や窒素蓄積量と,枯れ熟れ様登熟不良が発症しなかったと想定した状態(千粒重が軽くならなかった状態)での収量や窒素蓄積量を比較すると,枯れ熟れ様登熟不良が発症しなかったと想定した場合には,窒素蓄積量が16 g/m2と高かった.この値は,枯れ熟れ様登熟不良が発症した状態での窒素蓄積量や窒素施肥量の約10g/m2に比べて多く,枯れ熟れ様登熟不良が登熟期間中の窒素不足によって起こることが示唆された.実際,農家圃場の一部で窒素追肥量を5g/m2増加させた場合,枯れ熟れ様登熟不良で起こる葉の早枯れの程度が軽減され,千粒重の低下もやや改善された.
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Strategy for Future Research Activity |
現地試験は,2014/15年作(2014年12月播種)にも継続して実施しており,現在,登熟期間を迎えている.この圃場では,施肥水準がことなる後期重点型施肥法の検証プロットを設置しており,後期重点型の施肥体系に枯れ熟れ様登熟不良の発症抑制効果があるかどうかを検証している.この試験においても,3月以降に10日ごとに現地に赴き,生育調査や試料採集を進めている. また,現地では,すでに枯れ熟れ様登熟不良を発症している農家圃場が散見でき,本年は例年よりも発症時期が早く,症状が重い圃場が多いと予見されている.そこで,枯れ熟れ様登熟不良の発症程度が異なる現地農家圃場でも許可を得てサンプリングしている. 今後は,これらの試料の窒素濃度および葉内のアミノ酸濃度の推移などを解析し,枯れ熟れ様登熟不良を発症した個体の窒素代謝の詳細を解析するほか,後期重点型施肥法による枯れ熟れ様登熟不良の軽減効果を定量的に評価する.
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