2015 Fiscal Year Research-status Report
フラボノイド生合成系の環境応答を制御する分子機構の解明
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26450029
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三吉 一光 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (60312237)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダリア / 花色 / 環境応答 / 分子基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダリア(キク科)は,近年切り花の営利栽培が急増している.しかし,いくつかの品種の冬季栽培では,低温により花弁が橙色になる色抜け現象が発生し,安定した赤色花の生産方法の確立が切望されている. 一方,従来,様々な植物において花色に関する研究がされ,その科学情報の蓄積は大きいが,環境による花色の変化を遺伝子レベルで精査した報告は限定的である.本研究では,主にダリア品種‘熱唱’の安定的な生産方法の確立のための分子基盤情報の蓄積を行い,安定した花色の発現が可能な品種の育種や栽培に資することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダリア品種‘熱唱’の安定的な生産方法の確立のための基盤情報とするために,色素合成系遺伝子の発現量の違いを栽培環境と関連させ網羅的に調査した. 赤色花および橙色花からそれぞれ発達段階2,3,4の花弁を採取し,6つの色素合成系遺伝子(CHI, F3H, F3’H, FNS, DFR, ANS)の発現量の差異を調査するために,total RNAを抽出し,逆転写後リアルタイムPCRを行った.なお,内部標準はActinとし,プライマーはGenebankに登録されている配列や本研究で決定した配列を元に設計した. リアルタイムPCRより,6つの色素合成遺伝子の中でFNSのみが橙色花弁において赤色花弁よりも発現量が増加し,その量は発達段階2で2.9倍,発達段階3で9.3倍,発達段階4で29倍であった.以上の結果から,最低温度が色抜け現象を誘導し,花弁の色素組成を変化させた.その原因として橙色花弁ではFNSがどの発達段階でも強く発現することで,アピゲニンとルテオリン量が増加し,その一方でペラルゴニジンとシアニジン量が減少するためと考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,色抜け現象が誘導される最低温度とその期間の解明と,低温感受性を持つ花蕾の発達段階の特定を行う。ブドウにおいては気温や光などの環境条件によって色素合性遺伝子の発現量を調整するMYB転写因子の存在が知られている。ダリアにおいて見出されたDvIVS転写因子のような,フラボノイド生合成系を制御する調整遺伝子の本研究で対象とする現象に関与していることが予想されるが,今年度は,次世代シーケンサーによる網羅的な遺伝子発現量の解析を行う。また, DvFNSのクローニングにより,FNSの上流配列のプロモーター領域を精査し,色抜け現象の分子基盤の解明に取り組む。
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