2014 Fiscal Year Research-status Report
植物ホルモン類と関連遺伝子群の解析による単為結果性ナスの着果および肥大機構の解明
Project/Area Number |
26450041
|
Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
菊地 郁 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (30360530)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 単為結果 / ナス / 染色体部分置換系統群 / 組織形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
非単為結果性ナス(LS1934)を遺伝的背景として果実肥大性を支配する2か所のQTL領域および着果性を支配する1か所のQTL領域をそれぞれ単為結果性ナスと置換したCSSLs(A系統:果実肥大性、B系統:果実初期肥大性、C系統:高着果性)を栽培し、花芽分化開始時期から着果・果実肥大過程における子房の詳細な組織形態の解析を行った。 最初に、未受粉のA系統、LS1934および受粉したLS1934で比較を行った。 未受粉の子房はA系統では10日後以降にLS1934には見られない急激な肥大が観察された。一方、受粉したLS1934では子房の急激な肥大は開花5日後以降に認められた。このことから、受粉条件と比べてA系統の単為結果性による肥大は遅れて発現してくると考えられた。果皮の細胞層数は全処理区で同様の傾向を示し、花芽分化期から微量に増加し、開花10日後で最大数に達した。果皮における細胞の断面積は花芽分化期から開花後までは殆ど変わらないが、受粉したLS1934と未受粉のA系統では、子房の急激な肥大に伴い増加した。この事から、子房の肥大には2つの段階があり、受粉や単為結果性に関係なく、細胞数の増加によって微量に肥大する初期肥大と、開花後、細胞の肥大を伴い急激に肥大する後期肥大があると考えられる。 次に、未受粉条件でLS1934と各CSSLsを単独および複合してもつ系統で比較を行った。A系統以外のCSSLsにおいても、新鮮重の推移と細胞の肥大傾向に関連性がある事から、果実肥大は主に細胞の肥大によるものであると考えられた。一方、B、CおよびLS1934の胚珠は肥大せず、15日後には劣化した。この事から、A領域に起因する後期におこる急激な肥大には胚珠が関与し、一方B領域に起因する初期の肥大に胚珠は関与しないと推察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は、LS1934と単為結果性に関与する3つのQTL領域を単独および複合してもつ5つの系統を用いて、花芽分化期から果実肥大期にかけて詳細な組織形態学的解析を行った。その結果、各QTL領域が果実の肥大や着果性に対して発現するステージおよび組織を明らかにすることが出来た。また、QTL領域が複合する事による効果の推定も行う事ができた。各々の系統の各時期の子房および離層部のサンプリングを行い、次年度に行う内生ホルモン量の解析に用いるのに十分量を確保する事も出来た。以上のことから本研究は順調に進捗していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、H26年度に特定した単為結果性が発現するステージの組織を用いて植物ホルモン類を網羅的に解析する。系統間で植物ホルモン類の内生量を比較し、着果と果実肥大にそれぞれ関与する植物ホルモンを特定する。さらに、非単為結果性ナスLS1934系統に各種植物ホルモン処理を行い、着果および果実肥大性の組織形態学的解析を行い、着果および果実肥大と植物ホルモンとの関連性について総合的な解析を行う。
|
Causes of Carryover |
当該年度は概ね予定通りに予算を消化した。若干の残額が生じたが、これは植物材料の提供を受けている野菜茶業研究所との研究打ち合わせのために計上した旅費が、予定していた出張回数よりも少なくなったためため生じたと考えられる。次年度についての計画が先送りとなっているため、早急に研究打ち合わせを行う。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
植物ホルモン類の測定に使用する試薬、植物ホルモン類の標品、およびプラスチック製品などの消耗品に使用する。また、植物を育成するための圃場資材、切片解析用の器具、試薬類に使用する。 野菜茶業研究所での研究打ち合わせ、学会発表の旅費にあてる。
|