2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞死に依存しない植物抵抗性誘導系を活用したウイルス細胞間移行の抑止機構の研究
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26450052
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 信光 東京農工大学, 学術研究支援総合センター, 助教 (70431971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹生谷 博 東京農工大学, 学術研究支援総合センター, 教授 (60135936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウイルス抵抗性 / 植物免疫 / 過敏感応答 / タバコモザイクウイルス / トマトモザイクウイルス / 細胞間移行 / 移行タンパク質 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
抵抗性遺伝子Nをもつタバコでは,タバコモザイクウイルス (TMV) が感染するとNタンパク質がTMVのエリシター領域 (以下、p50) と相互作用することで過敏感応答(HR)が誘導されることがわかっている.最近の研究から,細胞死はウイルス抵抗性に必須ではなく,ウイルス感染抑制と細胞死は共役的な関係ではないことが示唆されている.そこで本研究では,細胞死を誘導しない条件でウイルス抵抗性の解析が可能な実験系を構築し,細胞死とウイルス抵抗性の関連性およびウイルス感染抑制の作用機序を解明することを目指した.前年度までの研究において,アグロバクテリウム浸潤法を用いて,適度にNとp50を一過的に共発現させたタバコ近縁種 (Nicotiana benthamiana) では,明確な細胞死を誘導しない状況でTMVに近縁なトマトモザイクウイルス (ToMV) の感染が抑制されることを強く示唆するデータを得ることができた.そこで当該年度では,まず,HR誘導の判断指標(細胞組織の形態変化,イオン流出,活性酸素種の発生)を用いた解析を行い,HRとの関連性を調べた.また,RT-PCR法を用いてHR関連遺伝子であるPR-1aとHin1の発現解析を行った.Nとp50の一過的共発現した組織では,HR誘導の判断指標およびHR関連遺伝子の変動はほとんど認められなかったことから,Nとp50を共発現させたN. benthamianaではHRと異なる細胞死非共役的なウイルス抵抗性が誘導されていることが示唆された.さらに, GFP融合型移行タンパク質 (MP) をコードするToMVを感染させてMPの細胞内局在を調べたところ,Nとp50を共発現させた細胞ではMPの原形質連絡への局在が著しく阻害されていることが示唆された.よって,Nとp50の共発現によりウイルス感染が抑制されている細胞ではMPが正常に機能していないことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,ウイルス抵抗性誘導時に細胞死が起こっていないことを実証するデータを得ることができた。「ウイルス抵抗性誘導時における細胞間移行への影響についての実験」では,予定していた「移行タンパク質の局在解析」はある程度目標に到達したが,カロースの蓄積については実験条件の検討にとどまった。また、「ウイルス抵抗性誘導時の組織における網羅的遺伝子発現解析」は, 予備実験的にRT-PCRによる遺伝子発現解析を進めており,網羅的な解析に用いる試料回収のタイミングの検討に時間がかかっているため着手できていない。ただし,RT-PCRの結果から,示唆的なデータを得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,「ウイルス抵抗性誘導時における細胞間移行への影響についての実験」と「ウイルス抵抗性誘導時の組織における網羅的遺伝子発現解析」について実験を進める。
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Causes of Carryover |
当該予算は年度内でタンパク質解析を行う際に用いる試薬代として計上していたが、サンプル調製に遅れが生じたため実施することが困難になることが分かった。試薬の劣化を防ぐため年度内での購入を止めることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に引き続きタンパク質解析を行う計画であるので、必要時に再度購入する予定である。
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