2014 Fiscal Year Research-status Report
ペクチンオリゴ糖が誘導する植物根の伸長促進作用メカニズムの解析
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26450061
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
濱田 茂樹 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90418608)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ / 根の伸長 / ペクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ペクチンオリゴ糖を幼葉期のイネに施用することで、根の生育が極めて向上することが見出されたことから、本研究ではペクチンオリゴ糖が誘導する、根におけるタンパク質発現の変化を捉え、植物成長促進作用のメカニズムを解明することを目指す。26年度は、ペクチンオリゴ糖の重合度の違いが、イネ根の成長に与える影響を検討した。また、ペクチンオリゴ糖処理により根にどのようなタンパク質が発現するか、二次元電気泳動によるプロテオーム解析を行った。施用したペクチンオリゴ糖は、酵素分解された平均重合度14(メチル化度72%)のものと、さらに酸加水分解を行った平均重合度4(メチル化度34%)のものを調製し用いた。温室において1~2ヶ月の生育期間の間、週1回の頻度で0.25%、0.5%溶液を施用したところ、いずれのペクチンオリゴ糖の場合も、コントロールと比較し乾燥重量で約1.5倍の根の重量増加が確認された。一方で、重合度による効果の違いは認められなかった。次に、0.5% ペクチンオリゴ糖(平均重合度14)で生育させたイネ根からタンパク質を抽出し二次元電気泳動に供することで、ペクチンオリゴ糖が誘導する特異的発現タンパク質群の網羅的解析を行った。発現量が有意に異なるタンパク質をターゲットにトリプシンを用いたゲル内消化を行い、TOF-mass spectrometer を用いてタンパク質の特定化を行った。その結果、ジベレリン誘導による根細胞の液胞肥大に関わることが知られるV-ATPase や aldorase C-1 の発現がペクチンオリゴ糖処理においても同様に増加していることが明らかとなった。さらに、これまで根の伸長との関連性が知られていない、新規のタンパク質を見出すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度研究計画では、ペクチンオリゴ糖の重合度やメチル化度が根の生育に与える影響およびペクチンオリゴ糖が誘導する特異的発現タンパク質群の解析を目標とした。ペクチンオリゴ糖の重合度やメチル化度が根の生育に与える影響については、今年度、一通りの解析を行うことが出来たが、更なるデータの蓄積が必要であるため、次年度も継続して行う。また、特異的発現タンパク質群の解析では、複数のタンパク質を同定することができたことで、ペクチンオリゴ糖誘導の根伸長に関わる代謝系を推定する重要なデータが得られたと考える。以上のように、当初の計画に従い、おおむね予定通りの実験が遂行できたことから、順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り順調に進展していることから、基本的には今後も計画に従って継続的に研究を行う。ペクチンオリゴ糖の重合度やメチル化度が根の生育に与える影響については、26年度に引き続きポット土栽培よるデータの蓄積の他、土中の微生物の影響を検討(排除)するために、今後は寒天培地を用いた無菌的な条件下での根の生育も解析する予定である。また、26年度に同定されたペクチンオリゴ糖で誘導されたタンパク質について、遺伝子発現レベルでの解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画の中で備品購入を予定としていた二次元電気泳動装置について、課題採択前に必要性が生じたため、別予算で購入することとした。また、採択後の実験も順調に進展し、二次元電気泳動用試薬なども予定より少なく済んだ。二次元電気泳動用試薬は次年度も利用するが、使用期限に制限があるためイネのサンプル調製のタイミングなどを鑑みて、必要時に購入することが望ましいことから、次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
二次元電気泳動の再現性とデータの蓄積のため、27年度も引き続き同様の実験を繰り返す予定である。実験回数も増えることが予想されるため、電気泳動試薬・一般試薬、あるいは進捗状況によっては遺伝子実験用試薬の購入費として使用する予定である。
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