2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア型マイマイガの飛翔行動および産卵行動を抑制する夜間照明技術の開発
Project/Area Number |
26450063
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
野村 昌史 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (50228368)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイマイガ / 夜間照明 / LED / 行動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア型マイマイガは、日本でも各地で樹木類の害虫として問題になっているが、船舶の積荷に飛来して産卵した卵によって、アメリカ合衆国へ侵入する可能性が高く、国際問題に進展している。そこで本研究は、アジア型マイマイガに対してLED光照射を行い、港などへの侵入を防止し、行動を抑制することで積み荷への産卵を防ぐことを大目標としている。具体的には飛翔行動抑制および光への忌避行動を引き起こすのに有効なLEDの照明条件(光の波長と光強度)を明らかにすることである。 本年度は、室内実験を中心に実験を行った。まず行動の活動性を記録するアクトグラフ装置を用いて、夜間照明を行わないときの、マイマイガ成虫の飛翔や産卵行動について観察した。その結果マイマイガの既交尾の雌成虫は、羽化後最初の1日は飛翔行動などの活動が記録されたが、その後は飛翔や移動は全く行われず、主な活動は羽化初日に限定されることがわかった。 また、ビデオカメラを用いて成虫の行動を撮影し、ビデオ再生しながら行動を観察したところ、主な行動は歩行と羽ばたきであった。そして夜間を想定した暗期にLEDを照射してこれを夜間照明とし、マイマイガの行動が変化するかを調べた。夜間照明については、明るい光と、最低限の光という2つの区を想定し、強光(650±1mW/m2)および弱光(6±1mW/m2)のLEDを照射した。その結果夜間照明は、マイマイガ雌成虫の夜間活動を変化させることがわかった。強光条件では、白色LEDおよび白色LED+淡黄色フィルムの照明は,マイマイガ雌成虫の活動が抑制していると考えられた.一方、白色LED+黄色フィルムおよび蛍光灯による強光夜間照明は,マイマイガ雌成虫の夜間活動を最終的に増加させる可能性が示唆された。弱光については累積活動時間については,歩行時間は淡黄色区で,羽ばたき時間は黄色区でそれぞれ無処理区と比較して有意に減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイマイガの雌成虫の活動時間については、野外での個体の記録はあるが、室内実験についての記録は乏しいものであった。今回の実験により既交尾の雌成虫が羽化が1日目しか活動しないことをはっきり示せたのは、大きな成果であった。またアクトグラフ装置に加え、ビデオカメラを使った活動記録をとることができたので、観察は時間がかかるものの、確実なデータをとることができた。 LEDによる夜間照明については、金沢工業大学が行った基礎データをもとに淡黄色や黄色のフィルターを装着したLED光源により、マイマイガの活動性が低下していることを示すことができた。以上により研究は概ね順調に推移していると判断できる。しかしながら現段階では、マイマイガの既交尾雌成虫の行動を、完全に抑制するところまでは達成していないので、個体数を増やしてほとんど活動性を示さない夜間照明条件を示すことが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降については、今年度に選定した照射するLEDの種類については、白色LEDに淡黄色や黄色のフィルターを装着したもので十分な成果が得られるのかについて確認したい。また今回設定した光強度の強弱の2条件が、アジア型マイマイガの飛翔活性を抑えることができるかどうかを、さらに個体数を増やして室内実験を行うことで検討したい。また室内実験以外にハウスなどを利用して、性フェロモントラップに上部から光を照射することで、誘引されるオス成虫の数が減少するかを調べ、誘引に対する忌避効果があるかも検討する。これについてはマイマイガの発生時期が短い時期に限定されるので、発生する時期において野外で試験を行うことについても検討している。場所については、現在試験場などと打ち合わせを行っているところであるが、港湾部ではなく高原部などの発生地に隣接する空き地などを予定している。 またメス成虫については、積極的に個体を誘引するものがないので、行動抑制や活動を抑えるという判定が難しいが、今年度で活動抑制が見られた光源を発生地に設置して、その周辺には雌雄とも個体が集まってこないという状況証拠から、産卵する場所選択や光照射に対する忌避効果を明らかにすることで、光源に対する評価を下す予定である。 また次年度で得られた室内および野外試験の結果次第では、さらに大きな系や可能であれば港湾部などで、アジア型マイマイガの飛翔活性の抑制が、広い範囲でも有効であることを示したい。広島県立総合技術研究所農業技術センターおよび隣接する港湾地域において、街灯状に配置した照明にはマイマイガが寄り付かないことなどを実験的に明らかにしていきたいと考えているが、現段階ではまだ多くの面が未定である。
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Causes of Carryover |
研究当初は、広島県立総合技術研究所農業技術センターへの研究打ち合わせを行うための出張を2回程度行うこととしていたが、スケジュールが一致しなかったことと、マイマイガの発生時期が短く、都合を合わせて試験を行うことができなかったために出張が1回となった。このことが予算が余った原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降も広島県立総合技術研究所農業技術センターへの出張は複数回行えれば、より密接な研究討議も可能であるが、マイマイガの発生時期などから簡単に増やすことは難しい可能性もある。長野県の発生地において野外試験を行うことを現在話し合っているので、次年度以降の出張旅費は長野県などへも実験で出向くことを考えに入れて使用していく予定である。
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