2015 Fiscal Year Research-status Report
鱗翅目幼虫における二次刺毛の被食防衛機能の解明:「ケムシ」に生物的防除は有効か?
Project/Area Number |
26450065
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杉浦 真治 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70399377)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 寄生蜂 / 二次刺毛 / マイマイガ / ギンケハラボソコマユバチ / 被食防衛機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
体表に刺毛をもつ鱗翅目幼虫は「ケムシ」と呼ばれる。ケムシはしばしば大発生し農林業に重要な被害を与える。大発生の要因の一つとして、刺毛により天敵からの捕食を逃れている可能性がある。しかし、刺毛の被食防衛機能を実験的に検証した研究はほとんどない。本計画では、捕食性や捕食寄生性の昆虫に対する刺毛の被食防衛機能について検証を行う。 本年度は、内部単寄生蜂ギンケハラボソコマユバチの雌成虫に、ハスモンヨトウ3齢幼虫とマイマイガ1齢・2齢幼虫を与え、これらに対する産卵行動を観察した。ハスモンヨトウ幼虫は体表に刺毛を持たない。一方、マイマイガ幼虫には刺毛がみられ、1齢から2齢になると二次刺毛と呼ばれるより長く太い毛がみられるようになる。マイマイガ2齢幼虫の平均刺毛は、ギンケハラボソコマユバチの産卵管鞘の長さと同程度か、より長い傾向にある。 実験は、産卵態勢をとったギンケハラボソコマユバチ雌成虫の目前に、ピンセットで寄主幼虫を配置し、雌成虫が産卵管を使って寄主幼虫に突き刺すかどうかを観察した。結果、ハスモンヨトウ3齢幼虫ではすべての寄生蜂が(N = 25/25)、マイマイガ1齢幼虫では84%の寄生蜂が(N = 21/25)産卵管を突き刺すのに成功したが、マイマイガ2齢幼虫ではわずか24%しか成功しなかった(N = 6/25)。しかし、マイマイガ2齢幼虫の刺毛を寄生蜂の産卵管よりも短くカットしたところ、94%の寄生蜂が産卵管の突き刺しに成功した(N = 23/25)。寄生蜂の雌成虫は、触覚や産卵管、脚などにマイマイガの刺毛が触れると産卵姿勢をやめたり、マイマイガの長い二次刺毛によって近づくことができなかったりする行動が観察された。 以上の実験・観察により、マイマイガ2齢幼虫の二次刺毛は寄生蜂の産卵管よりも長く、物理的な防衛機能が働いていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに材料を確保し、室内実験を行うことができた。本年度の研究成果については論文としてとりまとめているので、3年度目での論文掲載を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、3年目は二次刺毛のコストを査定するために、25°C、明期16 時間/暗期8時間の条件下でケムシ2種(マイマイガとクワゴマダラヒトリ)の各齢期の生育期間を測定する。また、脱皮殻および各齢期の乾燥重量(70°C)を測定し、脱皮殻が体重に占める割合を測定する。イモムシ2種(ハスモンヨトウ幼虫など)についても同様の測定を行う。ケムシとイモムシの齢ごとの生育期間および脱皮殻の重量比を測定することで、二次刺毛のコストを査定する。
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Research Products
(3 results)