2015 Fiscal Year Research-status Report
土壌中でのペプチド態窒素の存在状態とその由来に関する研究
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26450072
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
青山 正和 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60150950)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土壌 / ペプチド態窒素 / タンパク質 / 比重分画 / 団粒 / 赤外線吸収スペクトル / 次亜塩素酸ナトリウム分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌有機態窒素の大部分はペプチドもしくはタンパク質の形態(ペプチド態)で存在しているが、その存在状態と由来に関する詳細な研究は、ほとんど行われてきていない。そこで本研究は、これまで行われてきていない新規な方法よって土壌中のペプチド態窒素の存在状態を解析することを目的とする。 平成26年度に十分に行えなかった土壌からのペプチド態窒素の抽出法の検討を行ったところ、市販のタンパク質抽出キット(MO BIO、NoviPure Soil Protein Extraction Kit)が最適であった。キットを用いて畑土壌、樹園地土壌、森林土壌からペプチド態窒素を抽出し、SDS-PAGEを行うと、土壌の種類に関係なく、113、65、42、32、20kDaの位置にタンパク質のバンドが出現した。さらに、土壌にクローバーもしくはオーチャードグラスの乾燥粉末を加えて培養し、経時的にタンパク質を抽出してSDS-PAGEを行うと、いずれの場合にも113、65、42、32、20kDaの位置にバンドが出現した。バンドの濃度、すなわちタンパク質量の増減は、微生物バイオマス量とほぼ比例しており、これらのタンパク質が土壌微生物により生産されていることが示唆された。 褐色低地土および黒ボク土の畑土壌を水中篩別法により大きさの異なる団粒に分画した後、さらに平成26年度に確立した方法で、団粒外軽比重画分、団粒内軽比重画分、重比重粗粒有機物画分ならびに有機・無機複合体画分に分けた。これらの画分について、平成26年度に確立した次亜塩素酸ナトリウム処理-拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法によりペプチド態窒素の測定を行った。その結果、ペプチド態窒素は、軽比重画分よりも重比重画分、とくに有機・無機複合体画分に含まれ、マクロ団粒よりもミクロ団粒の構成成分として存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に計画していた、有機物施用を行った火山灰土である黒ボク土と非火山灰土である褐色低地土の物理分画と次亜塩素酸ナトリウム処理による有機物の酸化分解処理を適用した拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定によるペプチド態窒素の測定を行った。今年度は、物理分画法として、まず団粒サイズに基づいた分画を行った上で、昨年度に確立した団粒内軽比重画分、重比重粗粒有機物画分、有機・無機複合体画分への分画法を適用した。その結果、土壌団粒の大きさによってペプチド態窒素の存在状態が異なり、量的にはミクロ団粒の有機・無機複合体画分に多く含まれることが判明した。この成果は、平成28年9月の日本土壌肥料学会および平成28年11月のASA-CSSA-SSSA International Annual Meeting(米国)で発表予定である。また、平成26年度に行った物理分画と次亜塩素酸ナトリウム処理-拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定を適用した土壌のペプチド態窒素の測定に関する成果はカナダ土壌学会誌に掲載が決定し、ウェブで公表中である。 土壌からのペプチド態窒素の抽出に関しては、抽出方法の比較を行って、市販の土壌タンパク質抽出キットを用い場合にもっとも効率が良いことを明らかにした。また、この抽出法を土地利用の異なる土壌について適用し、抽出物の電気泳動を行なうことにより、土壌の種類に関わらず、共通したタンパク質が得られることを明らかにした。さらに、土壌に有機物を加えて培養し、経時的にタンパク質を抽出した場合にも同じタンパク質を得ることができ、これらのタンパク質が土壌微生物により生産されていることが示された。平成26年度に行ったアルカリ抽出と尿素分画によってペプチド態窒素が抽出されることを示した結果は、平成27年7月にオープンアクセスの国際誌に公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、平成27年度に抽出・分離に成功した土壌中のタンパク質のアミノ酸配列を解析することによりペプチド態窒素の由来を明らかにするとともに、物理分画法と組み合わせることによって土壌中でどのような状態で存在しているかを明らかにする。 平成27年度に抽出に成功したタンパク質は、電気泳動で分子量113、65、42、32、20kDaの5本のバンドに分かれた。これらのタンパク質のアミノ酸配列の決定には、プロテインシーケンサーによるN末端アミノ酸配列の解析ならびにトリプシン消化後に液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS/MS)による解析を行い、データベースにより相当する既知のペプチドもしくはタンパク質が存在するかどうかを検索する。現在のところ、土壌から抽出されるタンパク質は5種類のみなので、迅速な解析を行うために、民間のタンパク質解析受託サービスを利用する予定である。 物理分画画分のペプチド態窒素の解析において、平成27年度までの結果では、ペプチド態窒素は主に有機・無機複合体画分に存在していた。しかし、有機・無機複合体画分は53μmより小さな粒子をすべて一括して分析していたため、今年度は有機・無機複合体画分をさらに細かく分画して次亜塩素酸ナトリウム酸化分解-拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法により解析する。さらに、有機・無機複合体画分からペプチド態窒素を抽出してSDS-PAGEによりタンパク質の分離を行なう。
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[Journal Article] Changes in the soil C and N contents, C decomposition and N mineralization potentials in a rice paddy after long-term application of inorganic fertilizers and organic matter.2016
Author(s)
Cheng, W., Padre, A.T., Sato, C., Shiono, H., Hattori, S., Kajihara, A., Aoyama, M., Tawaraya, K. and Kumagai, K.
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Journal Title
Soil Science and Plant Nutrition
Volume: 62
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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