2015 Fiscal Year Research-status Report
オオムギ高親和性硝酸イオン輸送系の機能発現機構解明にむけた組織細胞学的アプローチ
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26450076
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
末吉 邦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10216278)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オオムギ / 高親和性硝酸輸送系 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オオムギ根において低濃度の外部硝酸イオン吸収に関わる高親和性硝酸輸送系(HATS)を構成する2つのトランスポータータンパク質(HvNRT2およびHvNAR2)の機能発現機構について、組織細胞生物学的側面から明らかにすることである。2つのタンパク質は、硝酸イオン吸収の際に根の細胞膜上において機能していると予想されている。26年度は、両タンパク質が根の皮層域の最も外側にある同じ細胞層の細胞膜上に存在していることを免疫組織化学的手法で明らかにした。この結果は、2つのタンパク質が何らかの相互作用をして硝酸吸収系として機能することを示唆している。 27年度は、HvNRT2およびHvNAR2が実際に相互作用をするのかをin votroで解析した。まず、細胞膜から露出していると予測されているHvNRT2.1のC末端断片(HvNRT2.1c)およびHvNAR2.3の中央断片(HvNAR2.3cent)を大腸菌における発現タンパク質として精製した。つづいて、HvNRT2.1cとHvNAR2.3centの相互作用をaffinity-column法で解析した。すなわち、HvNAR2.3の中央断片を固定化したカラムにHvNRT2.1のC末端断片アプライしたところ、両タンパク質断片がカラム内で相互作用することが明らかになった。これにより、両タンパク質の結合部位が初めて示唆された。アミノ酸置換した変異NRT2.1タンパク質C末端領域をいて同様の実験を行ったところ、463番目のセリン残基がアラニン残基に置換された断片において、顕著な結合能の低下が見られた。このことから、HvNRT2.1のS463の水酸基がNAR2.3との結合に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、オオムギ根のHATSを構成する2つのトランスポータータンパク質(HvNRT2およびHvNAR2)の機能発現機構を組織細胞生物学的側面から明らかにし、低窒素条件下での作物の窒素利用効率の向上技術に寄与できる分子基盤を提示することを目的とする。期間内で明らかにしようと計画している具体的項目は、1)オオムギ根組織内におけるHvNRT2.1およびHvNAR2.3の局在性の解明、2)HvNRT2とHvNAR2の相互作用に関係するアミノ酸配列の解明、3)インタクト植物細胞内におけるHvNRT2.1とHvNAR2.3の相互作用の解析、の3項目である。 以上の計画のうち、今年度は2)を達成することができたので、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
植物細胞内におけるHvNRT2.1とHvNAR2.3の相互作用を解析するために、Yongらの方法に従いBiFC法による解析を行う。すなわち、HvNRT2.1のN末端と分割黄色蛍光タンパク質(YFP)のN末端側との融合タンパク質(nYFP:HvNRT2.1)とHvNAR2.3のC末端と分割YFPのC末端側との融合タンパク質 (HvNAR2.3:cYFP)をタマネギ表皮細胞において同時に、一過的に発現させる。タマネギ表皮細胞において再構成されたYFPによる蛍光が観察される場合には、HvNRT2.1とHvNAR2.3が植物細胞内で結合して存在することが確かめられる。また、両タンパク質が相互作用して存在する場合の細胞内局在も明らかにできる。 また、HvNRT2.1とGFPとの融合タンパク質(HvNRT2.1:GFP)およびHvNAR2.3とDsRedとの融合タンパク質(HvNAR2.3:DsRed)をタマネギ表皮細胞に個別に一過的に発現させ、2種の融合タンパク質が細胞内のどこで発現しているのかを調べる。また、HvNRT2.1:GFPおよびHvNAR2.3:DsRedをタマネギ表皮細胞で同時に発現させ、緑色蛍光、赤色蛍光および両蛍光をマージさせた結果を観察する。これにより、2つのタンパク質が細胞膜に配置されるためにはお互いの存在が必要であるかが明らかにできる。
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Causes of Carryover |
27年度は、物品を他の資金と合わせて購入することができたため、次年度使用額として795,845円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、次年度使用額として生じた795,845円と当該年度請求額900,000円(直接経費分)を合わせた1,695,845円を使用予定である。内訳は、試薬等の物品費として1,145,845円、国内・国外旅費として300,000円、その他(委託分析等)として250,000円を使用予定である。
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Remarks |
http://www.agr.niigata-u.ac.jp/profile/sueyoshi/index.html
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[Presentation] Ammonium transporter, HvAMT1, in barley2015
Author(s)
Masato Shinohara, Shinji Ishikawa, Norikuni Ohtake, Takuji Ohyama and Kuni Sueyoshi
Organizer
The 5th Asian Conference on Green Technology in Agriculture
Place of Presentation
Chiang Mai, Thailand
Year and Date
2015-07-20 – 2015-07-21