2016 Fiscal Year Research-status Report
酵母膜輸送体のグルコース不活性化の分子機構とその生物学的意義
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26450084
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新谷 尚弘 東北大学, 農学研究科, 准教授 (70374973)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グルコース不活性化 / 出芽酵母 / 膜輸送体 / エンドサイトーシス / 発現制御 / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
1 出芽酵母ピルビン酸・乳酸輸送体Jen1のグルコース不活性化に関する因子の同定と機能解析 ゲノムワイド解析によって明らかにされていたJen1のグルコース不活性化に関与する因子のうち、Rps17Aに着目して研究を進めた。Rps17Aはリボソームの小サブユニットの構成因子であり、Rps17Bがパラログとして存在する。rps17A破壊株では、JEN1 mRNAのグルコース添加後の減少速度は、野生株のそれと同等であるにもかかわらず、Jen1タンパク質の現象は遅延した。翻訳阻害剤を用いた実験の結果から、rps17A破壊株においてJen1の翻訳停止が厳密に起こらないことが示唆された。rps17A破壊株では、RPS17B遺伝子の発現が亢進することが報告されていたので、野生株でRPS17B遺伝子を過剰発現させたところ、グルコースによるJen1の翻訳停止が遅延した。このことから、Rps17Bを含むリボソームからのJen1の翻訳停止の制御メカニズムが機能しないことが示唆された。また、JEN1 mRNAの3'非翻訳領域(3'-UTR)をアルコール脱水素酵素遺伝子ADH1の3'-UTRに置換するとJen1の翻訳停止の厳密な制御が起こらないことが分かった。これらのことから、mRNAの構造とリボソームの種類によって翻訳停止の制御が行われている可能性が考えられた。 2 Artタンパク質による輸送体の認識機構 Jen1は培地にグルコースが添加されると、エンドサイトーシスによって細胞膜から液胞へと輸送され分解を受ける。このグルコース依存的なエンドサイトーシスは、Art4と呼ばれるユビキチンリガーゼ・アダプターを介したユビキチンリガーゼRsp5によるユビキチン化が引き金となって起こる。Jen1のC末端近傍に存在する連続した3アミノ酸残基がArt4による認識に必要(十分ではない)であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Art4とJen1の結合実験の再現性を確立するために時間を費やした。そのため、予定していたトランスクリプトーム解析に着手することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Art4によるJen1の認識機構に関する論文の執筆を行う。 Art4や他のアダプタータンパク質に認識されないJen1変異体を取得できたので、この株を用いたトランスクリプトーム解析を行う。この株では、培地にグルコースが共存していても乳酸やピルビン酸が取込まれ、細胞内の代謝が撹乱される可能性がある。この解析を通じてグルコース不活性化の生物学的意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
論文投稿のための再実験に注力したため、トランスクリプトーム解析が出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に出来なかったトランスクリプトーム解析に使用する。
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Research Products
(2 results)