2014 Fiscal Year Research-status Report
新規ヒ酸還元細菌Geobacter OR-1のヒ素代謝遺伝子発現ダイナミクス
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26450086
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天知 誠吾 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80323393)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒ素 / Geobacter / ヒ酸還元 / 鉄還元 / 汚染 / シトクロム / 細胞外電子伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
Geobacter sp. OR-1株はGeobacter 属細菌で唯一ヒ酸呼吸能を持つ、国内水田土壌より単離された細菌である。本研究ではOR-1株のドラフトゲノム解析を行い、ヒ素代謝遺伝子や細胞外電子伝達に関与する遺伝子を含めた網羅的な遺伝子情報を得ること、さらにプロテオーム解析を用いてヒ素曝露時に発現する遺伝子を網羅的に特定し、OR-1株のヒ素に対する応答機構を推定することを目的とした。 OR-1株の推定ゲノムサイズは4.5 Mbp、CDSは4,154個であった。OR-1株は解毒的ヒ酸還元酵素遺伝子(arsC)および異化的ヒ酸還元酵素遺伝子(arrAB)を中心とする2種類のヒ素代謝遺伝子群を有していた。OR-1株は解毒的ヒ素代謝酵素であるArsA(ATPase)とArsD(ヒ素シャペロン)を複数コードし、ヒ素代謝遺伝子がドラフトゲノム上に局在して存在する点が特徴的であった。さらにOR-1株のゲノムには少なくとも83個のc型シトクロム遺伝子が確認された。また、細胞外電子伝達に必須とされるピリ構成遺伝子pilAも確認された。その他に酸素代謝遺伝子、嫌気的炭酸固定経路遺伝子も存在した。 次に電子受容体にフマル酸(20 mM)のみ、またはフマル酸とヒ酸(1 mM)を添加した条件でプロテオーム解析を行った。その結果、いずれの条件においてもTCA回路と糖新生による酢酸の利用が確認され、電子伝達鎖におけるエネルギー生産に関与するタンパクの発現が確認された。一方、ヒ素の存在下ではarsC遺伝子群上のヒ素排出ポンプAcr3、ストレスタンパクの制御に関わるUspA、亜ヒ酸運搬シャペロンArsDなどが特異的に発現し、ヒ素の解毒に関わる遺伝子群の協調的な発現が示唆された。また、抗酸化能を持つペルオキシレドキシンや走化性タンパクも検出されOR-1のヒ素に対する防御機構の一端がうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Geobacter sp. OR-1をフマル酸を電子受容体とした培養条件で生育させ、ヒ酸の存在下、非存在下でのプロテオーム解析を予備的に行った結果、Acr3、ArsDなど明らかなヒ素応答タンパクの発現が認められた。一方、ヒ酸を主たる電子受容体とした生育条件ではなかったことから、当初標的としていたArrABなどの発現は観察されなかった。今年度の研究により、網羅的なプロテオーム解析が有効であることが明らかとなったため、次年度以降さらに検討を進めることでOR-1株のヒ素に対するストレス応答機構がさらに明らかになることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.異化的ヒ酸還元酵素遺伝子を中心としたヒ素アイランドのマッピング解析を行う。 2.ヒ酸を主たる電子受容体として生育させた際のプロテオーム解析を行い、フマル酸生育時の発現タンパクと比較する。 3.同様にヒ酸、フマル酸生育時の菌体よりRNAを抽出し、arrA, acr3, arsCなどヒ素代謝に関与する遺伝子の発現や発現量を比較する。
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Causes of Carryover |
年度末に少額の残額が発生したため、次年度へ持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験で使用する試薬等物品費として使用予定である
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