2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26450090
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大島 拓 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50346318)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 核様体 / H-NS / HU / IHF / Fis / GeF-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの解析の結果、大腸菌の核様体構造を介したストレス制御には、HU、H-NSに加え、IHFおよびFisが、関与している可能性が高まった。そこで、本年度は、HUの相同タンパク質である、IHFも解析対象に含め解析を行ってきた。大腸菌のHU/IHF破壊株の核様体が、温度ストレスにより、どのような影響を受けるかを解析したところ、核様体構造が明らかに変化し、破壊により細胞形態および生育にも大きな影響が出ることが分かった。この様な変化は、HUおよびIHFの単独欠失では、見いだせないことから、HUおよびIHFの機能は、相互に補完しあうことが予想された。また、GeF-seqによる、大腸菌ゲノム上の核様体タンパク質の、詳細なマッピングから、H-NSとIHFが近接して結合している領域がゲノム上に多数存在することが明らかになった。この結果は、IHFとH-NSの間に何らかの機能相関があることを示していると考えている。そこで、IHF欠損株を用いてH-NSの結合プロファイルをGeF-seqにより観察したが、結合プロファイルには大きな変化はなかった。これは、1)HUの補完的な役割によるもの、2)H-NSの結合プロファイルに大きな変化はないが、その立体構造や、ゲノム領域間の相互作用に変化が出ている、ためではないかと考えられた。これまでの結果を総合し、HU/IHFは、ゲノムの超らせん構造、らせん構造を維持し、核様体構造を介したストレス応答が円滑に進むことを助けていることを想定し、さらなる解析を実施している。今年度は、GeF-seqおよびトランスクリプトーム解析を用いて、HU/IHFの機能解析を通して核様体構造のストレス応答における役割を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、IHFの関与も考慮し、HU/IHF欠損株を用いて解析を進めることで、HU/IHFが、大腸菌の核様体の機能維持に予想以上に大きな役割を担っていることを示唆できた。GeF-seqによる詳細な核様体タンパク質の結合地図を作成したところ、大腸菌ゲノムのかなりの部分は、HU/IHFおよびH-NSと結合しており、加えて、IHFとH-NSが、同時に結合している領域が複数ゲノム上に存在することが明らかになった。この結果を元に、IHF欠損株で、H-NSの結合プロファイルを観察したが、その結合プロファイルは変化していなかった。これらは、H-NSホモログ欠損株でも観察された現象であり、結合プロファイル自体は変化していないが、核様体の立体構造の変化を介して、転写制御には影響している可能性が考えられた。また、IHFの機能をHUが代替することで影響が抑えられている可能性も示唆された。これらの結果から、HU/IHFは、ゲノムの超らせん構造、らせん構造を維持し、核様体構造を介したストレス応答が円滑に進むことを助けていると予想し、解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度決定した核様体タンパク質の詳細な結合地図は、出来るだけ早い時点で公開できるよう努力する。また、HU/IHF欠損株における、他のDNA結合タンパク質の機能についても解析をする必要が出てきたと考えている。一方で、HU/IHF欠損株が予想以上に大きな表現型を示すことから、GeF-seqを用いた解析に困難が発生する可能性がある。また、HU/IHFの欠損では、H-NS等の核様体タンパク質の結合プロファイルは、表面上、影響を受けない可能性も出てきたことから、今年度は、引き続きGeF-seq解析を継続して実施するとともに、それを補完する解析手法である、トランスクリプトーム解析も精力的に進め、HU/IHFのゲノム機能に与える影響を明らかにする。その結果を参考に、核様体構造による発現制御受ける標的遺伝子の中から、さらなる解析の標的とする遺伝子を選定し、標的遺伝子の発現制御機構を解明するためのレポーターアッセイ、分子生物学的な解析を通して、核様体構造を介したストレス応答の分子機構を解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
解析対象である変異株の変異の影響が大きく、GeF-seq等のゲノム解析に時間がかかっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度得られた知見も活用し、GeF-seq等のゲノム解析を進める。
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Research Products
(6 results)