2015 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌ゲノムの「膨大な数の二次代謝遺伝子群」の役割と環境シグナル伝達系による制御
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26450109
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本山 高幸 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70291094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 洋 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (00126153) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 応用微生物 / 菌類 / ゲノム / 抗生物質 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌ゲノムの「膨大な数の二次代謝遺伝子群」の役割と環境シグナル伝達系による制御メカニズムを明らかにし、糸状菌の膨大な能力の効率的制御・利用を可能にするため、本年度は、二次代謝遺伝子の役割の解析を行うとともに、未知の二次代謝制御系の探索を行った。まず、イネいもち病菌のピリクロール類の生産誘導条件を見出し、DNAマイクロアレイデータを解析し、生産誘導条件で発現誘導される二次代謝遺伝子の中から生合成遺伝子を見出し、生合成遺伝子クラスターを同定した。ピリクロール類はイネに病斑様の褐変を引き起こすポリケチド化合物であるが、ピリクロール生合成遺伝子破壊株はイネに対する病原性を保持していた。また、昨年度見出したテヌアゾン酸の生合成酵素TAS1が新しいタイプの二次代謝産物生合成酵素であったため、ホモログ遺伝子を探索したところ、約30個のホモログが見出された。ホモログ遺伝子を持つのは全て糸状菌であり、多くは昆虫や植物の病原糸状菌やキノコであり、生物間相互作用への関与が示唆された。更に、未知の二次代謝制御系の探索を行った。理研天然化合物バンクNPDepoの化合物ライブラリーを用いて二次代謝を制御する化合物を探索し、その標的を明らかにすることにより新たな二次代謝制御タンパク質を同定することを目指した。NPDepoの標準化合物ライブラリーの80化合物及びパイロットライブラリーの376化合物の中から、二次代謝産物生産を変化させるものを探索し、2種類のイネいもち病菌株に対してテヌアゾン酸生産を上昇させる化合物を1個取得した。NPDepoからヒット化合物の類縁構造化合物を入手し、評価し、より活性が高い化合物を1個取得した。取得した化合物は現在までに二次代謝制御活性が報告されていないものだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度の続きの研究を行うとともに、未知の二次代謝制御系の探索を行うことを目的にした。昨年度見出したテヌアゾン酸生合成遺伝子のホモログが様々な糸状菌に存在することを見出した。新たに、ピリクロール類の生産誘導条件と非生産条件の遺伝子発現の比較からピリクロール類生合成遺伝子を絞り込み、それに続く解析で遺伝子を同定することに成功した。ピリクロール類は病斑形成への関与が示唆されていたが、生合成遺伝子破壊株は感染能を保持していた。また、理研天然化合物バンクNPDepoの化合物ライブラリーからテヌアゾン酸生産を誘導する活性を示す化合物を見出した。取得した化合物は現在までに二次代謝制御活性が報告されておらず、新たな二次代謝制御系の発見が期待される。以上のように、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度の続きの研究を行うとともに、環境シグナル伝達系による二次代謝遺伝子の発現制御メカニズムの解析を行う。環境シグナル伝達系による生合成遺伝子クラスターの発現制御がどのような経路で行われているのかを明らかにする。特にエピジェネティック制御や経路特異的転写因子との関係に注目する。最後に、二次代謝制御系の間の関連や、一般性について解析する。まず、染色体レベルのエピジェネティック制御や生合成経路特異的転写因子を介してなされているかどうかの解析を行う。既知のHDAC阻害剤等の作用と比較するとともに、環境シグナル伝達系による二次代謝制御が起こっている条件で、特異的抗体を用いたヒストンのアセチル化やメチル化の解析や、エピジェネティック制御に関与するヌクレオソーム構造の解析等を行う。また、生合成経路特異的転写因子遺伝子を破壊し、経路特異的転写因子を介して行われているかどうかを解析する。次に、それぞれの環境シグナル伝達系による二次代謝制御の間の関連の解析を行う。生産制御される化合物の違い、発現制御される二次代謝遺伝子の違いで比較する。異なる発現制御条件を組み合わせて、発現制御条件の間の関連を解析する。多重遺伝子破壊や、複数の化合物による処理等により行う。更に、環境シグナルによる二次代謝制御メカニズムの一般性の解析を行う。二次代謝制御メカニズムの一般性を明らかにするため、進化的に離れた糸状菌を用いて同様の方法で二次代謝制御が可能かどうか解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が18,313円生じた。本年度、テヌアゾン酸の生産誘導化合物の取得に成功したが、当初の予想よりもヒットする二次代謝制御化合物の数が少なく、化合物の解析に充てる研究費が当初の予定より減少し、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、当初の予定より英文校閲等 にかかる費用の増大が見込まれ、必要な研究費の総額が増加するため、次年度使用額18,313円を増加分にあてる。次年度に請求する研究費130万円とあわせて1,318,313円で次年度の研究を行う。80万円で物品購入を行い、研究を遂行する。旅費の35万円で研究成果の発表を行う。その他の約17万円で英文校閲等を行う。
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