2014 Fiscal Year Research-status Report
ポリフェノールの高度利用のための酵素の機能解析と開発
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26450117
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小関 卓也 山形大学, 農学部, 教授 (70372191)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 麹菌 / タンナーゼ / フェルラ酸エステラーゼ / α-L-ラムノシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はタンナーゼファミリーに分類される特異性の異なるエステラーゼを麹菌Aspergillus oryzaeから見いだし、それぞれを特徴付けている(Koseki et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 83, 689-696(2009); FEBS Lett., 584, 4032-4036(2010); Appl. Microbiol. Biotechnol., 97, 5351-5357(2013))。上述のエステラーゼはいずれもタンナーゼ活性は示さず、タンナーゼとフェルラ酸エステラーゼとは基質特異性が明確に異なった。研究代表者はまた、A. kawachiiのラムノシダーゼの精製および遺伝子クローニングを行っており(Koseki et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 80, 1007-1013(2008))、A. oryzaeには少なくとも3つのラムノシダーゼ様遺伝子があることを確認している。昨年度はPichia pastorisで発現させたA. oryzae由来リコンビナントタンナーゼおよびA. kawachii由来α-L-ラムノシダーゼを精製し、精製酵素を用いて基質特異性、反応速度パラメーターを解析した。タンナーゼの成果に関しては、投稿論文としてまとめた(Mizuno et al., J. Biosci. Bioeng., 118, 392-395 (2014))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度計画のうち、A. oryzae由来タンナーゼの酵素学的性質の解析についてはPichia pastorisで発現させたリコンビナントタンナーゼを精製し、精製酵素を用いて基質特異性、反応速度パラメーターを解析し、その成果を学会発表(大塚ら,第66回日本生物工学会大会)するとともに投稿論文としてまとめた。また、Aspergillus oryzaeラムノシダーゼ様遺伝子(AorhaA、AorhaB、AorhaC)のうち、AorhaBおよびAorhaCの2つの遺伝子をリコンビナントの系で発現させ、その培養上清はp-ニトロフェニルα-L-ラムノピラノシドに対する活性を有し、当該遺伝子はラムノシダーゼの可能性を示した。AoRhaB と類似しているXylaria polymorphaのXpoGH78(Nghl et al., Appl. Environ. Microbiol., 78, 4893-4901 (2012))はラムノシダーゼ活性に加えてフェルラ酸エステラーゼ活性を有することが報告されているが、リコンビナントAoRhaBの培養上清はフェルラ酸エステラーゼ活性が認められず、基質特異性が異なることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
A.oryzae由来フェルラ酸エステラーゼのX線結晶構造解析から、本酵素は触媒ドメインとリッドドメインの2つからなり、また、触媒残基のセリン、ヒスチジンの隣のシステイン残基がジスルフィド結合を構成するユニークなモチーフを有し、触媒残基に隣接するジスルフィド結合は酵素活性に重要なことを明らかにした(Suzuki et al., Proteins, 82, 2857-2867(2014))。A. oryzaeタンナーゼにも触媒残基と考えられるセリン、ヒスチジン残基の隣にシステイン残基があり、これらシステイン残基はジスルフィド結合を形成していると推察された。これらのシステイン残基をアミノ酸置換した変異酵素を作製し、タンナーゼ活性に及ぼす影響、基質特異性などを調べ、触媒作用とジスルフィド結合との相関を解析する。また、A. oryzaeタンナーゼの成熟タンパク質は翻訳後の修飾過程で2つのヘテロサブユニットからなると報告されている。プロセッシングは316番目のアルギニンのC末端で切断され、リジン315-アルギニン316のように塩基性アミノ酸が連続することからKex2様のプロセッシングが考えられる。そこで、316番目のアルギニンをアラニンなどに置換した酵素やその近辺のループを欠失させた酵素など、プロセッシングが起こらない変異酵素を作製し、酵素精製後、変異酵素の安定性をCDスペクトルなどを用いて検証し、タンナーゼ活性に及ぼす影響を調べ、プロセッシングと触媒作用との相関を解析する。また、A. oryzae由来ラムノシダーゼは精製し、特徴付けを行ってゆく。
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