2015 Fiscal Year Research-status Report
ポリフェノールの高度利用のための酵素の機能解析と開発
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26450117
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小関 卓也 山形大学, 農学部, 教授 (70372191)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 麹菌 / フェルラ酸エステラーゼ / タンナーゼ / α-L-ラムノシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はタンナーゼファミリーに分類される麹菌Aspergillus oryzae由来フェルラ酸エステラーゼBのX線結晶構造解析を行い、本酵素は触媒ドメインとリッドドメインの2つのドメインから構成され、触媒残基のセリン、ヒスチジンの隣のシステイン残基がジスルフィド結合を構成するユニークなモチーフを有し、触媒残基に隣接するジスルフィド結合は酵素活性に重要なことを明らかにしている(Suzuki et al., Proteins, 82, 2857-2867(2014))。H27年度は、基質認識に関わると考えられるアミノ酸の部位特異的変異を行い、変異酵素の解析により、リッドドメイン中のLeu235、Tyr348、Tyr356は本酵素の基質認識に重要であると示唆された。また、A. oryzae由来のタンナーゼについては、プロセッシングの起こらない変異酵素(AoTanAΔKR)を造成し、酵素特性に及ぼす影響を解析した。 研究代表者はA. oryzaeには少なくとも3つのラムノシダーゼ様遺伝子があることを確認している。昨年度はPichia pastorisで発現させたA. oryzae由来α-L-ラムノシダーゼA(AoRhaA)の酵素学的性質を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度計画のうち、タンナーゼファミリーに分類されるA. oryzae由来フェルラ酸エステラーゼ遺伝子(AofaeC2)を見いだし、その酵素学的性質の解析についてはPichia pastorisで発現させたリコンビナントAoFaeC2を精製し、精製酵素を用いて基質特異性、反応速度パラメーターを解析し、その成果を学会発表した(伊藤ら,第67回日本生物工学会大会)。A. oryzae由来のタンナーゼについては、プロセッシングの起こらない変異酵素(AoTanAΔKR)を造成し、酵素特性に及ぼす影響を調べたところ、変異酵素の比活性が野生型酵素よりも向上するとともに最適温度が低温側にシフトし、酵素的特徴の変化が見られ、その成果を学会発表した(大塚ら,日本農芸化学会東北支部第150回大会)。また、Aspergillus oryzaeラムノシダーゼ様遺伝子(AorhaA、AorhaB、AorhaC)のうち、AorhaA遺伝子をリコンビナントの系で発現させ、その培養上清はp-ニトロフェニルα-L-ラムノピラノシドに対する活性を示した。天然基質のヘスペリジンに対しては、pNP-α-L-ラムノピラノシドと比較してやや高い活性を示し、さらにナリンギンやルチンに対する活性より顕著に高く、またナリンギンとルチンではルチンに対する方がやや低かった。これはアグリコンとの結合様式が関係しており、ルチンの3-O-グリコシド結合よりもヘスペリジンおよびナリンギンの7-O-グリコシド結合に反応性が高く、また、ナリンギンのラムノースのα-L-(1→2)結合よりも、ヘスペリジンのラムノースのα-L-(1→6)結合に基質特異性が高いことが示唆され、その成果を学会発表した(石川ら,日本農芸化学会2016年度大会)。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度はA. oryzae由来フェルラ酸エステラーゼ様タンパク質(GenBank accession number:BAE61730)の特徴付けを行い、これまでに明らかにしたA. oryzae由来フェルラ酸エステラーゼとの特に、基質特異性を比較し、その有用性を検討する。また、A. oryzae由来でフェルラ酸エステラーゼの調査に用いられる4つの合成基質には全く反応でず、天然の基質からフェルラ酸を遊離する新規な酵素を取得している。本酵素の基質識別に関わるアミノ酸残基を特定し、タンパク質工学的手法を用いてより反応性の高いフェルラ酸エステラーゼを開発する。 AoRhaAについては、各基質に対する速度論的パラメーターなど、詳細な酵素学的特性や遺伝子の発現調節を調査する。また、AoRhaBおよびAoRhaCについても、酵素学的性質を明らかにするとともに、当該遺伝子の発現調節について調査する。
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