2014 Fiscal Year Research-status Report
ストレス誘発型腎臓培養装置の開発および腎障害メカニズムの解明
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26450118
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
王 碧昭 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80261775)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ストレス誘発 / 腎臓 / addicsin / EAAC1 / 基底膜 / 糸球体 / ECM |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスから派生した疾患の中に、多くの腎疾患が注目されているが、腎臓のストレスバイオマーカが少ないため、発症メカニズムの解明が困難である。本研究は脳と腎臓両方に発現するaddicsinタンパク質に着目し、ストレス惹起剤PTZと高架十字路を用い、addicsinが脳と腎臓の関連機序を検証した。また、脳内addicsinと結合する神経型グルタミン酸トランスポーターであるEAAC1タンパク質の腎臓での発現も検証した。初年度はストレスを受けたマウスとコントロールマウスの腎臓を比較し、addicsinとEAAC1の局在・機能の変化および腎臓にもたらした変異を観測した。その結果、ストレスマウスの腎臓組織において、萎縮、変色、尿細管内腔の狭窄、ボウマン嚢の菲薄化、糸球体及び尿細管周辺の間質で線維化および血管の損傷が観察された。免疫染色結果では脳と異なり、ストレス条件下においてaddicsinが減少したのみならず、EAAC1に対して結合せず、互いに非局在することを発見した。これらの結果により、腎臓内のaddicsinとEAAC1は脳と異なる機能を持つことを示唆した。また、ストレスマウスの腎臓において、糸球体基底膜の肥厚が観察され、PAS染色とMasson染色により、メサンギウム基質の増加、ECMの変性が観察された。これらの腎形態は自己免疫疾患に類似したことを見出した。今後ストレスからもたらして腎臓免疫機能の変化をさらに検証したい。最後に、in vitro培養系のストレス誘発条件を探索した結果、pH6~6.5、温度32Cの制御がストレス誘発可能であることを確認した。上記の成果を平成27年3月3日につくば技術研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、ストレス小動物の腎障害検証およびストレス誘発型腎臓に対する障害条件を解明するため、ICRマウスを使って、ストレスモデルを樹立した。達成した具体的な成果は下記とおり挙げられる。 ①高架十字路にマウスを走らせ、十字路のopen arm/close armへのマウス侵入・滞在回数の比率とストレス惹起剤PTZ投与量との相関関係を算出・解析し、ストレスの基準評価と薬剤によるストレス条件の樹立に成功した。 ②腎障害の検証において、PTZストレス惹起後のマウスから摘出した腎臓を肉眼所見し、光学顕微鏡を用い、腎臓の糸球体、尿細管、ボウマン嚢、間質、動脈の変化をHE染色で全体像を把握した。さらにPAS染色およびMasson染色を用い、組織内における膠原線維の線維化と核酸変化を見出した。また、免疫蛍光染色法により、addicsin, EAAC1, 基底膜成分IVコラーゲン、ラミニンの発現と局在も解明した。 ③In vitro培養系において、腎臓障害をもたらせる圧力、温度、pH等の物理条件を導入し試みた。その結果、温度とpHの制御がストレス誘発に可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度(平成26年度)はストレスマウスモデルを樹立したが、脳と腎臓の共通マーカであるaddicsinとEAAC1がストレス条件下で、其々の臓器に異なる発現傾向と局在を示したため、腎臓におけるaddicsin/EAAC1の機能解析が課題となった。また、ストレスマウスが自己免疫疾患に類似した病態腎を示したことも興味深い。ストレスが免疫能抑制への機序は新たな課題となる。今年度の研究計画は以上の2点を加え、予定通りの分子生物学、生化学的な手法でストレス要因と機序を解明することである。特に、膠原繊維の増加は腎臓内のECMの変性に起因する可能性が高いため、ECMのoutside-in-signaling とECMのremodeling径路の解析を重点的に進む。また、腎臓の鬱血が観察されたため、血管変異および血圧制御に係るreni-angiotensin径路と細胞死に係るcaspase径路のkey factorを解析したい。 一方、in vitroのストレス誘発型の腎臓培養系の開発も平行的に進む。特に循環型持続的に培養できる装置の開発をめざすため、腎臓輸入大動脈と輸出大静脈をミミックするチューブの活用が必要である。血清を含む腎臓概要駅とストレス惹起剤が輸入チューブを介して培養腎臓に持続的に灌流循環させられ、糸球体基底膜に通せない灌流液は輸出大チューブを介して排出させる。培養期間、温度、pHを制御しながら、腎臓の形態変化を定期的に撮影観察し、生検を行う。生体内ストレスと同様な腎障害の有無を検証し、in vitro腎臓ストレス誘発系の樹立を試みる。
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Research Products
(1 results)