2016 Fiscal Year Research-status Report
メチル供与体・SAMを介した短期絶食による寿命延長メカニズムの解明
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26450119
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
廣田 恵子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00375370)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 線虫 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
食餌制限が寿命延長をもたらすことは、酵母から線虫・マウスに至る幅広い種で報告されており、普遍的なメカニズムの存在が示唆されている。絶食などの栄養・食餌変化は、細胞に受容され、遺伝子発現や代謝物の変化を惹起することで生体環境を大きく変化させると考えられており、線虫においては、短期絶食によって、寿命延長が見られるが、その分子機序は全く不明であった。 本研究課題では、短期絶食における栄養の変化が生体にもたらす影響とその分子メカニズムを解析し、栄養摂取の変化がどのような経路を介して寿命を制御しているのか、またどの栄養素が重要なのかを含めた分子機序を明らかにする。 タンパク質、DNA、RNA、代謝物質などには、メチル化、アセチル化、リン酸化などの様々な化学修飾が付加され、その機能や性質を変化させる。それにより恒常性の維持やストレスへの応答が可能となる。昨年度は、LC-MS/MSを用いて化学修飾量を測定する実験系の立ち上げを行い、タンパク質、DNA、RNA の化学修飾をモニターする系を確立した。本年度は、線虫個体の抽出物を用いて、化学修飾量を測定する事に成功し、絶食などのストレスがタンパク質、核酸に与える影響を解析した。ある種の化学修飾が絶食ストレス時に変化することを見出した。また、この化学修飾を触媒する酵素を同定し、食餌の変化がどのように化学修飾を制御しているのか、また、化学修飾の変化が寿命に影響を与えるかについて解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、線虫抽出液を用いたLC-MS解析から、絶食ストレスによって変化する化学修飾を解析し、同定することができた。また、その化学修飾を触媒する酵素の同定にも成功した。この結果は、短期絶食による寿命延長メカニズムを解明するにあたり、非常に重要な結果だと考えられる。従って概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、絶食ストレスによって変化する化学修飾とその触媒酵素を同定することに成功した。今後は、絶食ストレス時やその後の線虫サンプルを経時的に採取し、RNAseq.解析などを行うことで、遺伝子発現、化学修飾やタンパク質発現の変化を統合的に解析する。そして、この解析で変化した遺伝子群、化学修飾とタンパク質発現との関係性を精査し、絶食ストレスが遺伝子発現や化学修飾に与える影響を詳細に解析する。さらには、それらの結果から、短期絶食による寿命延長メカニズムを解明していく。
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Causes of Carryover |
短期絶食による寿命延長にメチオニン代謝が重要な役割を果たしていることを見出した。また、昨年度新たにメチオニン代謝の下流で働く遺伝子を同定することができたため、短期絶食とこの遺伝子の関係性を検証する必要が生じた。加えて、短期絶食によって変化する化学修飾とその触媒酵素の同定にも成功しており、それらと短期絶食による寿命延長との関係性を精査することも目的達成のために不可欠である。メチオニン代謝物であるSAMを介した短期絶食の寿命延長メカニズムをより深く理解するためにも次年度に研究を推進する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに同定した遺伝子について、ノックダウンやトランスジェニック線虫などを作製し、短期絶食との関わりを、遺伝学や生化学、分子生物学を駆使して解析する。
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