2014 Fiscal Year Research-status Report
レクチンのタンパク質工学的改変による活性発現機構解明とその有用機能開発
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26450128
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
畠山 智充 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50228467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 英昭 長崎大学, 工学研究科, 助教 (10452872)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レクチン / 蛋白質工学 / 糖鎖 / X線結晶構造解析 / 部位特異的変異体 |
Outline of Annual Research Achievements |
CEL-IIIのオリゴマー化に関与するアミノ酸残基の役割を明らかにするために,ドメイン3内に位置する複数のアミノ酸残基に対する変異体K338R, N369A, D371K, K405E, K405Rを作製した。これらの変異体の溶血活性評価を行った結果,K338RはWT CEL-IIIと同程度の活性を示し,K405E, K405Rは凝集活性を示すとともに溶血活性を示したが,N369A, D371Kは活性が確認されなかった。これまでの結果からAsp371とLys405はイオン結合により分子内の構造を安定化しているものと考えられており,Lys405のGluやArgへの変異は静電反発や分子内での立体障害を生じ,ドメイン構造が不安定化するとともに溶液中でのオリゴマー化が促進されたものと考えられた。それによって変異体の赤血球凝集活性は強まったものの,膜孔形成能力は低下したものと考えられる。また,D371Kでは溶血活性が消失したが,これもLys405との静電反発が生じたために膜孔形成が抑制され,活性が低下したものと考えられた。一方,Asn369は膜内でのオリゴマー形成過程において隣の分子との安定な相互作用に寄与していることがX線結晶解析から推定されていたが,実際にN369Aは活性が消失していたことから,Asn369がプロトマー間での相互作用に重要な寄与をしていることが強く示唆された。Lys338については,これまでの研究から,Ala置換変異体の活性が大きく低下することが知られていたが,今回作製したK338RについてはWT-CEL-IIIと同程度の活性を示したことから,この残基の正電荷が活性に重要な寄与をしていることが示唆された。以上のように,CEL-IIIのドメイン3に存在するアミノ酸残基のうち,活性に関与している残基とその役割についての解明が進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CEL-IIIの部位特異的変異体の作製から多くの活性に重要なアミノ酸残基の同定に成功し,その役割についての理解が進展した。すでに明らかにしてCEL-IIIオリゴマーの結晶構造との関係をもとに,具体的なアミノ酸残基の機能を推定することが可能になったことから,今後は同一のアミノ酸残基についてより多くの部位特異的変異体を作製し,詳細な機能解析を進めることが可能であるものと期待される。これらの成果から,研究は順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCEL-IIIの部位特異的変異体についてX線結晶構造解析を行うことにより,そのオリゴマー化における動的挙動をとらえることを試みる。特に,膜孔形成毒素タンパク質において重要な課題とされる中間状態構造(プレポア構造)を捉えることができれば,そのオリゴマー化の具体的なメカニズムに対する理解が大きく進展するものと考えられる。さらに,CEL-III以外についても,新たな糖認識様式をもつ新規レクチンを見出すことと,それらの人為的な特異性改変を蛋白質工学的手法で可能にするための基礎的情報を集積していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りの支出額となり,端数が未使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通りの研究計画に沿って使用する予定である。
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Research Products
(17 results)