2015 Fiscal Year Research-status Report
構造情報を基盤としたFMN結合反応の多重解析と分子進化的考察
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26450131
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
北村 昌也 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20244634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 猛 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (20422074)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フラボタンパク質 / タンパク質工学 / 構造機能相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度以降は、1. イオン強度(特にリン酸イオン濃度)の影響、2. 変異体を用いた網羅的解析、3. X線結晶構造解析、4. Psuedomonas由来のフラボドキシン(Fld)の阻害剤の設計を行う予定であった。 1. については、野生型FMN結合タンパク質について、リン酸イオン濃度を0mMから200mMとして蛍光滴定法により解離定数を求めたところ、リン酸イオン濃度の上昇とともに解離定数も上昇することを見出した。また、Tris塩酸緩衝液系で硫酸イオン濃度を変化させた場合でも、同様の傾向が見られた。一方で、表面プラズモン共鳴(SPR)法による解離定数の決定法について検討を加え、測定できるレベルにまで条件を絞り込んだ。しかし、この測定においては、リン酸イオンの影響はあまり見られず、硫酸イオンによる競合に関しては、若干の影響が観察された。これらのことから、リン酸イオンや硫酸イオンによる影響は、フラボドキシンに見られるほど大きなものではなく、FMNの結合機構が異なっているのではないかと考えた。 2. については、1. の条件で、FMNのリン酸基と相互作用するThr54変異体について、同様の滴定を現在行っている。また、前年に得られたT31V変異体について、SPR解析を行った。 3. については、Fldの2量体形成に重要なCys残基をAla及びSerに変異させた変異体の結晶を得、X線結晶構造解析を行った。これら2つの構造は非常によく似ていたが、野生型Fldとは異なっていた。また、申請には記載しなかったが、昨年度のアポ化の方法が非常に有効であることが分かったので、アポFldの結晶を得、これもX線結晶構造解析を行った。これらの結果から、FldのFMN結合機構に関して、新たな提案を行う予定である。 4. については、3. の結果を用いて現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。 研究実績の概要のうち、1. は予定通りに達成でき、十分な考察が行える段階になっている。2. については、等温滴定型熱量測定法による解離定数の測定ができていないが、これは、平成28年度に行う予定である。この分析機器が、研究協力者が所属する東京大学に設置されていることが主な原因である。すなわち、大阪から出張して必ず確かな結果が得られなければ、予算及び時間、サンプルすべてに大きな損失となるので、特にサンプルの変性条件とその安定性の検討を慎重かつ綿密に行なう必要があった。しかし、その条件を確立できたので、平成28年度の課題として取り組む予定である。さらにもう1つ遅れている原因として、実験を手伝ってくれる学生の教育に若干手間取ったことも挙げられるかもしれない。また、SPR法による解析も、十分な経験が得られたので、他のサンプルに対しても、同様の解析が行える状態となったことも特筆すべき点として挙げられる。 3. については、予定以上の進展が見られた。すなわち、アポ化条件の検討を十分に行ったことで、他のフラボタンパク質にも応用でき、申請したフラボドキシンだけでなく、FMN結合タンパク質についてもアポタンパク質の結晶を得ており、現在X線結晶構造解析中である。アポタンパク質の構造が解析できれば、フラボドキシンとFMN結合タンパク質について、FMN結合機構に関する、より詳細な検討ができるものと考えている。 4. については、平成28年度の課題と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度以降に予定していた研究計画において、やり残した点を重点的に推進するとともに、得られた結果から十分な考察を行う予定である。 まず、1. 等温滴定型熱量測定法による解離定数の測定が挙げられる。この測定により、結合反応過程におけるΔHやΔSといったパラメータが得られ、結合反応をより詳細に検討することができる。 次に、2. Fldの阻害剤の設計であるが、変異体を含めた構造解析を進めた上で、その考察として提案できればと考えている。一方で、その生理的な影響について、Fldの生理活性(存在意義など)についても、検討を行う予定である。 最後に、得られた結果を統合して、FMN結合反応について、新たな機構を提案するとともに、タンパク質の成熟過程について、普遍的な原理を提案する予定である。 平成27年度は、実験を手伝ってくれる学生として大学院生4名(M2;1名、M1;3名)に卒論生1名の体制で行っていたが、1名のM2が修了し、卒論生が他大学院に進学してしまった。そこで平成28年度は、十分に経験のある大学院生3名に加え、新たに卒論生2名を加えることにした。特に、新M2は修士論文として研究をまとめなければならず、以前よりも研究時間が増し、条件検討も十分に注意を払っている。また、技術の「伝承」のため、卒論生に十分な教育を行う予定である。
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Research Products
(5 results)