2014 Fiscal Year Research-status Report
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26450143
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須貝 威 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60171120)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 速度論的分割 / リパーゼ / エステル交換 / 遠隔位不斉中心 |
Outline of Annual Research Achievements |
MNBカルボン酸(1a)は、アミノ酸のように不斉中心を有する生体物質の鏡像異性体比を分析する目的で、大類、西田らにより開発されたキラル誘導分析試薬である1)。アセタート2aを基質とする、リパーゼを用いた速度論的分割を活用した1aの両鏡像体の効率的調製法の確立を図った。 THFを溶媒とし、求核剤として作用する2-プロパノール存在下、2aにBurkholderia cepaciaリパーゼを作用させると、片方の鏡像体が優先的に反応し、鏡像選択比を示すE値は72であった。 得られた両鏡像体の鏡像体過剰率をさらに向上させようと、一度分割した両鏡像体を基質として再度リパーゼによるエステル交換で速度論的分割を試みた。まず、fast isomerである(R)-2aは、エステル交換で得られたアルコール2b (90.8% ee)を再度アセチル化、エステル交換に付した。転換率90%で反応を停止したところ、得られた(R)-2bの鏡像体過剰率は99.4%まで向上した。一方、反応の遅い(S)-2aは、一般的な速度論的分割の原理に従えば、反応の進行に伴って、その鏡像体過剰率は100%に近づくはずである。しかし、本反応では反応が進行するにつれ、立体障害が小さく反応性の高い第一級アルコール2bが生じる。このものがアシル酵素中間体に再び求核攻撃して元のエステルに戻る逆反応が進行し、結果として転換率を上げても鏡像体過剰率が上昇しなくなる可能性が高い5)。このような逆反応を避けようと、初回のエステル交換を転換率48%で一旦停止、fast isomerから生じた2bを除いた後、反応で残った(S)-2a (87.2% ee)を再度エステル交換に付したところ99.8% eeで(S)-2aを得た。 アルコール2aの両鏡像体は、温和な条件で、MNBカルボン酸(1a)のメチルエステルへと変換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
MDシミュレーションの結果、基質の側鎖は多環芳香族が好適であることを明らかにした。これらの知見を基に、我々はより高感度なキラル分析試薬の創製を目指し、蛍光強度の高いビピリジンのRu錯体を有する3を設計した。予備的知見ながら、Burkholderia cepacia リパーゼを用いアセタート4aのエステル交換を試みたところ、期待通り一方の鏡像体の反応が優先的に進行した(E>200)。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は当初の計画にほぼ従い実施予定であるが、MNBカルボン酸で得られた知見に基づき、本テーマはさらに検討を重ねる。
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Causes of Carryover |
MNBカルボン酸に関連する、遠隔位不斉中心の立体化学認識に関わる研究について、次年度にさらに拡張するためだが、後述の学会でその成果を発表予定であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として消耗品として酵素・試薬、有機溶媒、ガラス器具等に充当するが、一部はBiotrans 2015の学会出張に使用も予定している。
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