2016 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient organic synthesis utilizing microbial enzyme catalysts
Project/Area Number |
26450143
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須貝 威 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60171120)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | リパーゼ / 位置選択的反応 / 立体選択的反応 / ポリフェノール / 含窒素複素環 / 速度論的分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
有用ポリフェノール類で、抗カビ作用を示すセリノンをナリンゲニンから、抗酸化性スチルベノイドであるアストリンギンをピセイドから合成、また、M3受容体に対する結合活性が高く、動物実験においても強い気管支拡張効果を有する(R)-メペンゾラートの重要な出発原料である(R)-3-ヒドロキシ-N-メチルピペリジン)を、ラセミ体の光学分割により調製する研究に取り組んだ。合成に際し要求される「位置・立体選択的変換手法の開拓」が最大の課題であり、以下にその成果を示す。セリノンの合成には、ナリンゲニンの7位と4’位のヒドロキシ基をアセチル化し、化学的に反応性が低い4’位を選択的に脱アセチル化しなければならない。その位置に選択的に反応させる酵素法として、テトラヒドロフラン中、イソプロピルアルコール求核剤としてCandida antarctica リパーゼ Bを作用させるエステル交換反応を見出した。配糖体の全アセチル体を基質として、この反応をアストリンギンの合成にも応用した。反応媒体として水を使わず、酸・塩基の影響を受けにくいエステル交換は光学分割にも有用であった。 アセチル基は安価で、温和な条件で容易に導入可能である。しかし、酸・塩基性条件下における化学的な脆弱性により、これまでアルコールやフェノール性ヒドロキシ基の保護基として多段階合成に用いられた例は少ない。代表者は新しい選択的変換に加え、最終段階で不要になったアセチル基を脱保護する温和な条件をも見出したことにより、アセチル基を活用する有機合成化学の新しい可能性を拓いた。
|