2015 Fiscal Year Research-status Report
ストリゴラクトンの新規生合成・代謝酵素遺伝子の同定
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26450144
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
梅原 三貴久 東洋大学, 生命科学部, 教授 (30469895)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ストリゴラクトン / イネ / 代謝 / 硫黄 / LC/MS-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は窒素欠乏やリン酸欠乏に応答してストリゴラクトン(SL)産生量を増加させる。今年度、イネを窒素やリン酸以外の他の必須無機栄養素を欠乏させて栽培し、内生SLの5-deoxystrigol(5DS)を定量すると、硫黄欠乏条件においても5DS産生量が増加することを発見した。植物にとって硫黄は必須栄養元素の1つで、硫黄源として硫酸イオン(S)を吸収している。S欠乏条件で栽培した植物は枝分かれが減少し、葉が黄化する。そこで、S欠乏条件でSL産生量が増加する原因を明らかにするために、S欠乏条件で栽培したイネの5DS産生量およびSL関連遺伝子の発現量を調べた。 イネ(Oryza sativa L.)品種シオカリを水耕液のS濃度を変えて7日間栽培し、水耕液および根の5DSを定量した結果、S濃度が増加するにつれて5DS量は低下した。SL関連遺伝子の発現解析を行うために、S欠乏水耕液で7日間栽培し、7日目にS有り(+S)、無し(-S)の水耕液に移植した。根を回収し、液体窒素で凍結後、RNAを抽出、逆転写反応後、qRT-PCRでSL関連遺伝子発現量を調査した。その結果、SL生合成遺伝子D27 の発現が-Sで著しく増加し、+Sで減少した。一方、SL情報伝達遺伝子D3 とD14 の発現は-Sで減少し、+Sでは増加した。さらに、リン酸欠乏(-P)、窒素欠乏(-N)と-Sを組み合わせて複数の栄養欠乏条件で栽培したときの5DS産生量を調べた。-N、-P、-S、-NP、-NS、-PS、-NPSで7日間水耕栽培し、8日目に5DSを定量した。その結果、-PS の5DS産生量が最も多い傾向にあった。しかし、他の栄養素欠乏の組み合わせ(-NP、-NS、-NPS)では-N、-P、-S単独で欠乏した処理区と比べて5DS産生量に大きな変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は、先に他の研究グループに報告されたことにより、そのまま進行することが難しくなったため、軌道修正を行った。これまでは、リン酸欠乏および窒素欠乏に対するイネの応答を調査していたが、硫黄欠乏にも応答してストリゴラクトンが増加することが明らかとなり、その原因がSL生合成遺伝子の1つD27 の発現量が著しく増加するためという新しい知見を得ることができた。今後、研究の進捗を挽回する。
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Strategy for Future Research Activity |
カーラクトンからストリゴラクトンへの変換反応についてはまだ未解明な部分が多い。イネのMAX1については、5つのホモログが存在することから複雑であるが、トマトではMAX1およびその下流で働くと思われる2オキソグルタル酸依存的酸化酵素の遺伝子は各1個ずつしか存在しない。新たに筑波大学遺伝子実験センターの共同利用・共同研究が採択されたことを受け、TILLINGでそれぞれの変異体を探索し、それらの遺伝子の機能を明らかにする。 トマトでは、他の植物と同様、オロバンコールやソラナコールなどいくつかの天然型ストリゴラクトンを生産しており、リン酸欠乏下で生育させるとこれら内生SLの生産量が増加する。モデル植物シロイヌナズナでは内生SL量が極めて少ないこと、イネでは競合する研究グループが先行しやすいことから、マイクロトムのストリゴラクトン生合成欠損変異体を用いることで接ぎ木実験や導管液中のカーラクトンやストリゴラクトン分析が可能であり、代謝研究のみならず、ストリゴラクトンの輸送に関する研究を独自に展開できる。
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Research Products
(2 results)