2015 Fiscal Year Research-status Report
脳内環境を保護するトリプトファン代謝鍵酵素の食品成分による制御機構
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26450150
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
江頭 祐嘉合 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (80213528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トリプトファン / NAD / ナイアシン / キノリン酸 / ファイトケミカル / 炎症 / ミクログリア / ACMSD |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSD)、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)は、神経毒キノリン酸の生成に影響を与えることが報告されている鍵酵素である。キノリン酸はトリプトファン・NAD転換経路の中間代謝産物であるが何らかの理由で脳内に多量に存在するとNMDA受容体を介して神経細胞を変性させることが報告されている。ACMSDは様々な環境要因(栄養成分、ホルモン)で活性が変動し、IDOはリポ多糖(LPS)やある種の炎症でその活性が誘導される。しかしこれらの酵素のファイトケミカル(フィトケミカル)を含む食品成分や栄養状態における影響および分子レベルでの調節機構の詳細は明らかではない。そこで本研究は、これらを明らかにすることを目的とした。 ミクログリア細胞の培養液にLPSと玉葱やソバ等に含まれるケルセチンを添加し培養したところ、IDO、NO、およびIL-6等いくつかの炎症性サイトカインの発現や分泌を抑制した。 血中キノリン酸量に影響を与えるACMSDの発現調節機構を解明するため、ラットのACMSDのプロモーター部位のレポータープラスミドを作製した。ACMSDの転写因子HNF4α(糖・脂質代謝に関連)の結合領域に着目したレポーターアッセイの系を構築し、レポーターアッセイを行ったところ、植物油脂に含まれるαリノレン酸や魚油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)がACMSDの転写活性を低下させることを明らかにした。また、マウスにおいてインスリンによるACMSDの発現調節にPGC-1αが一部関与している可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) ある種のファイトケミカル(フィトケミカル)がミクログリア細胞において炎症誘導を抑制することを示した。 2) ACMSDのレポーターアッセイの系を構築し、ある種の食品成分が転写活性を変動することを示した。 3) ACMSDの発現調節にPGC-1αが一部関与している可能性を示した。 以上の理由により、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ケルセチン等ある種のファイトケミカル(フィトケミカル)がミクログリア細胞のLPSによる炎症誘導を抑制すること、およびトリプトファン代謝を変動させることを示した。今後は作用点や構造相関を明らかにする。さらに糖尿病など疾病時の条件下で動物実験を行い、同様に検証する。
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