2015 Fiscal Year Research-status Report
量子ドットプローブを用いたフェニルプロパノイド系抗アミロイド性新素材の分子設計
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26450153
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中村 宗一郎 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00105305)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アミロイド性タンパク質 / 安息香酸エステル / ユニバーサルプローブ / 抗アミロイド効果 / アミロイドーシス発症モデルハエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,量子ドットによって蛍光標識化したアミロイド形成探索子(量子ドットプローブ)を創製し,これを用いてフェニルプロパノイドに由来する抗アミロイド性新素材の分子設計を行うことを目的としている。平成26年度の結果を受けて,本年度はフェニルプロパノイド及びその誘導体の抗アミロイド性の構造-機能相関を明らかにする目的で,まずは多様なアミロイド性タンパク質に対して,アミロイド形成状態を高感度かつ定量的に測定することが可能な「ユニバーサル量子ドットプローブ」の開発を試みた。標的アミロイド性タンパク質にはアミロイドβ,アポリポプロテインII,ヒト型シスタチン,ヒト型ステフィンB,インスリン及びリゾチームの6種類を用いた。その結果,量子ドットにCLIVAGDから成るペプチドを付加したもの(LD6)がアミロイド形成のユニバーサルプローブとなり得ることを見出すことができた。そこでLD6の抗アミロイド化合物分子設計の有用性についての検証を行った。すなわち,4-ヒドロキシ安息香酸(4hBA:分子量138.12)を取り上げ,これを基本骨格にしたメチルエステル(4hBA1:分子量152.15),エチルエステル(4hBA2:分子量166.18),プロピルエステル(4hBA3:分子量180.12)及びブチルエステル(4hBA4:分子量194.23)の抗アミロイド効果を調べた。その結果,チオフラビンT法及び電子顕微鏡観察法と同等以上の感度で抗アミロイド効果(4hBA4>4hBA3>4hBA2>4hBA1>4hBA)を確認することができた。また,平成27年度はアミロイドーシス発症モデルハエ(ヒトアミロイドβ42過剰発現ショウジョウバエ)を用いた実験系(①歩行運動能,②寿命,③アミロイドβ発現量,④関連遺伝子群発現量)を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は多様なアミロイド性タンパク質のアミロイド化をモニターすることができるユニバーサル量子ドットプローブを開発することに成功した。こうして作成したユニバーサルプローブ(LD6)を用いて,フェニルプロパノイドに由来する抗アミロイド化合物創製の分子設計のための実験を実施した。広義のフェニルプロパノイドである4-ヒドロキシ安息香酸及びそのエステルを用いて検証した結果,LD6は従来からのアミロイド測定方法と同等以上の感度でアミロイド化及びその阻害効果を追跡できることが確認された。また平成27年度はアミロイドーシス発症モデルハエ(ヒトアミロイドβ42過剰発現ショウジョウバエ)を用いたアッセイ系を確立することができた。このような成果の上にたって,現在,標的タンパク質固有の優れた抗アミロイド効果を持つ新素材の分子設計を継続し実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に開始した本研究は,これまでおおむね計画通りに進展している。平成26年度は天然に広く分布しているフェニルプロパノイドのリポフィル化,グリコシル化,及びグリコ・リポフィル化複合体を調製することに成功し,平成27年度はユニバーサル量子ドットプローブLD6の創製に成功している。平成28年度はこれまでの研究を継続するとともにユニバーサルプローブLD6を用いて新規抗アミロイド性フェニルプロパノイド複合体の分子設計の集大成をはかる。その過程では,アミロイドーシス発症モデルショウジョウバエを用いた実験も行う。ハエの実験系では①歩行運動能,②寿命,③アミロイドβ発現量及び④アルツハイマー病の発症に関連すると推測されている遺伝子発現量を指標とする。また,新規物質の安全性の評価と食生活への応用の可能性についても検討する。
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Research Products
(4 results)