2015 Fiscal Year Research-status Report
ソバ茎葉乳酸発酵物から得られた新規降圧ペプチドの降圧メカニズム解明
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26450154
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中村 浩蔵 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (20345763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血圧 / 血管 / ACE阻害 / ペプチド / 発酵食品 / 乳酸発酵 / in vivo / ex vivo |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い,本研究で開発したex vivo ACE阻害活性測定法を用いて,発酵キョウバク由来ACE阻害ペプチド(FBP)のACE阻害活性メカニズム解明を進めた。昨年度,FBPで最も活性の高いWTFRを用いた試験で,WTFRの血管蓄積による有効濃度上昇を報告したが,本年度の研究で,蓄積したWTFRが分解されて生じたフラグメントペプチド(WTFR-PF)が生体組織でACEを阻害し,さらに,WTFRとWTFR-PFの組み合わせによる相乗効果によって生体内で有効なACE阻害を引き起こしていることを明らかにした。 WTFRのex vivo ACE阻害活性測定に用いた血管中に,5種のWTFR-PF(WTF,TFR,WT,FR,TF)が生成しており,WTFR-PFの50%ACE阻害濃度IC50および50%血管収縮抑制濃度EC50は,全てWTFRと同等以上であった。WTFRとWTFR-PFの血管組織中濃度をLC/MSで定量した結果,WTFRはIC50を超える濃度で,WTFR-PFはIC50の約18%の濃度で血管組織に蓄積していた。また,in vitroでWTFRおよび5種のWTFR-PFを25%阻害濃度で2種混合して理論的に50%ACE阻害を引き起こす濃度で試験を行ったところ,WTFR/WT,WTFR/WTF,TFR/WT,TFR/WTF,FR/WT,FR/WTFの組み合わせで有意にACE阻害活性が増加しており,組み合わせによる相乗効果がin vitro試験で確認された。そして,LC/MS定量結果に基づくWTFR + WTFR-PF血管組織中濃度の再構成液を用いたex vivo試験では,理論値の1.8倍のACE阻害相乗効果が確認された。さらに,QCM法でACEに複数のペプチドが結合し,複数阻害剤反応により相乗効果が引き起こされている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H26年度全ての研究計画とH27年度以降の研究計画の約2/3を完了し,申請時に予測したメカニズムを裏付ける結果が定量的に得られた。まず,本態性高血圧自然発症ラットの内皮除去胸部大動脈リング標本を用いたex vivo ACE阻害活性測定法を開発した。そして,発酵キョウバク由来ACE阻害ペプチド(FBP)のex vivo ACE阻害活性とin vivo ACE阻害活性の高い相関,ex vivo ACE阻害活性とin vivo ACE阻害活性の低い相関を明らかにした。この結果は,酵素との結合力に加えて組織への親和性などの要素がACE阻害物質のin vivo ACE阻害活性に関与していることを示唆している。また,FBPで最も活性の高いWTFRを用いた試験で,蓄積したWTFRが分解されて生じたフラグメントペプチド(WTFR-PF)が生体組織でACEを阻害し,さらに,WTFRとWTFR-PFの組み合わせによる相乗効果によって生体内で有効なACE阻害を引き起こしていることを,ex vivo ACE阻害活性測定法を応用した研究で明らかにした。この相乗効果は,ACEの2つの結合ドメインに,各ドメインと結合力の高い別々のACE阻害活性ペプチドが結合して引き起こされている可能性が示された。これまでの研究業績は,5件の学会発表(うち国際学会発表1件)と3件の論文発表(うちトムソン・ロイターのデータベース:Journal Citation Reports の5年間インパクトファクター3.702,総合科学分野上位15.8%のQ1論文1件)である。本研究成果の上位論文への掲載およびWTFR + WTFR-PFの ACE阻害相乗効果が定量的に得られた(本年度研究実績の概要参照)ことは予測を上回るものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の研究実施項目は,Lineweaver-Burkプロット解析によるWTFR + WTFR-PFの組み合わせによる相乗効果メカニズム解析,WTFR-PFの高血圧自然発症ラットへの単回経口投与試験による降圧作用確認,LC/MS定量結果に基づくWTFRおよびWTFR-PFの血管組織中再構成液の高血圧自然発症ラットへの単回経口投与試験による降圧作用の相乗効果確認である。これまでの試験結果から判断して,当初の目標は十分に達成できると考えられる。また,研究成果の学会発表,論文発表を積極的に行い,研究成果を研究室ホームページで公表する。
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