2015 Fiscal Year Research-status Report
脂質過酸化反応を制御するγ-トコフェロールのフリーラジカル捕捉作用機構
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26450155
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山内 亮 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (50126760)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | γ-トコフェロール / 脂質過酸化 / ビタミンE / 抗酸化 / フリーラジカル / 酸化二次反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の成果をもとに、ミセル溶液におけるリノール酸メチルヒドロペルオキシド(MeL-OOH)とγ-トコフェロール(γ-TH)のヘミン触媒反応生成物を検討するとともに、MeL-OOHの分解によって生成するアルデヒドに対するγ-THの抑制効果を調べた。 MeL-OOH(0.5 mM)とγ-TH(0.1又は0.2 mM)を、0.5% Brij 35を含む0.1 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)でミセル溶液とし、ヘミン(10μM)を添加して37℃で反応させた。ミセル溶液中の反応生成物をHPLC分析したところ、tocored、γ-tocophreylquinone、MeL-OOH由来のエポキシペルオキシルラジカルとγ-THとの付加体(γTOO-epoxyMeL)が確認された。ミセル溶液での反応は非常に速く進行し、γ-THは反応1分後に消失した。また、本反応系で生成するアルデヒドをジニトロフェニルヒドラジン誘導体としてHPLCで分析したところ、methyl 9-oxononanoateとhexanalが確認された。ミセル溶液へのγ-THの添加は、これらのアルデヒドの生成を抑制し、すでにアルデヒド生成抑制効果が知られているα-THと比較すると、同程度の抑制効果であることが示された。 ミセル溶液における様々な反応は、界面活性剤の性質が大きく影響する。そこで、非イオン性と陰イオン性の界面活性剤を用いて作成したMeL-OOHミセルのヘミン触媒分解反応を検討した。非イオン性界面活性剤でミセル化したMeL-OOHは、陰イオン性界面活性剤でミセル化したものよりもアルデヒド生成量が多く、一方、THの添加によるアルデヒド生成の抑制は、陰イオン性界面活性剤でミセル化した方がより効果的であることが示された。 以上の結果より、ミセル溶液中でのMeL-OOHの酸化二次反応におけるγ-THの作用は、均一溶液中とは異なる機構で進行することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミセル溶液中の脂質過酸化反応におけるγ-トコフェロール(γ-TH)の役割について、リノール酸メチルヒドロペルオキシド(MeL-OOH)のヘミン触媒分解反応を用いて検討し、γ-THの捕捉反応生成物の特定とそれらの挙動を明らかにした。またMeL-OOH分解産物であるアルデヒドに対するγ-THの生成抑制効果とミセル反応系における界面活性剤の影響を明らかにすることができ、本度の研究実施計画はほぼ達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
リノール酸メチルヒドロペルオキシド(MeL-OOH)を用いたγ-トコフェロール(γ-TH)の作用を均一溶媒系とミセル系で明らかにすることができたので、今後は生体膜モデルであるリン脂質を用いて、ミセル系とリポソーム系による脂質過酸化二次反応のおけるγ-THの作用機構の解明をめざす。 すなわち、リン脂質として1-パルミトイル-2-リノレオイルホスファチジルコリン(PLPC)を使用し、PLPCのリポキシゲナーゼ酸化でヒドロペルオキシド体(PLPC-OOH)を調製して、ミセル溶液でヘム触媒(ヘミン、ヘモグルビン、ミオグロビン)によるPLPC-OOHとγ-THのレッドクス分解反応を行う。これまでの結果から反応生成物はPLPC-OOHとγ-THとの付加体と予想され、HPLCで分離して構造を確定する。また、リポソーム系で検討する場合には、酸化反応が起こりにくい1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)で調製したリポソームにPLPC-OOHとγ-THを組み込み、ヘム触媒によるレッドクス分解反応を行う。生成するアルデヒドとγ-TH反応生成物は、HPLCで網羅的に解析する。その結果、γ-THの添加が最終産物であるアルデヒド生成を抑制でき、PLPC-OOHとγ-THとの付加体の生成が確認されれば、リン脂質リポソーム中でもγ-THが脂質過酸化二次反応を抑制できる証拠となる。また、生体内においてγ-THはα-THとともに存在しているため、α-THを共存させた場合について検討し、さらにPLPCリポソームを用いた脂質過酸化一次反応におけるγ-THの作用についても、反応生成物の解析から検討する。
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Causes of Carryover |
予算はほぼ予定通り使用したが、端数が残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に従って、確実に予算を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)