2014 Fiscal Year Research-status Report
消化管分泌細胞の細胞膜機能変化を介しインクレチン分泌量を変化させる食品成分の研究
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26450162
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
光武 進 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10344475)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GPR120 / インクレチン |
Outline of Annual Research Achievements |
メタボリックシンドロームの患者は、国内で940万人にのぼり、その治療/予防法の開発は社会保障費抑制の観点からも社会的急務と言える。本症候群は、医薬品による治療が難しく、その為予防研究の重要性も高い。本症候群は食生活の改善/運動等が有効とされる事から、これら生活習慣を科学的に検証する必要がある。近年、食品由来の糖、脂肪酸、ペプチド等が消化管分泌細胞上に発現する受容体を刺激し、インクレチンと呼ばれるホルモンの分泌を介してインスリンの分泌促進や食欲抑制等に働く事が明らかになってきた。インクレチンの一つGLP-1は、インスリンの分泌促進や食欲抑制等に働く事が知られ、現在、GLP-1受容体やその分解酵素がII型糖尿病改善薬のターゲットとして注目を集めている。GPR120は、脂肪酸の受容体として知られ、小腸内分泌細胞において脂肪酸をセンシングし、GLP-1の分泌を促す事が知られている。本年度は、このGPR120の活性化を定量的に検出する方法を開発した。具体的にはGPCRの活性化によるTGFαの分解を指標したアッセイ系をGPR120に応用した。その結果、従来法のウエスタンブロットに比較して、感度も、定量性もかなり優れたアッセイ系が完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、これまで食品に含まれるスフィンゴ脂質の食品機能性の研究を行って来た。その中で、穀物や酵母に特異的に含まれるスフィンゴ脂質分解物ファイトスフィンゴシンが、細胞のスフィンゴミエリン(SM)の生合成を活性化させる事を明らかにした。近年、ミカンの果皮に含まれるリモノイドの一種がSMの合成を阻害する事も報告された。興味深い事に、ミカンの皮は陳皮と呼ばれ、食欲を改善する漢方薬として古くから知られている。また、海藻に含まれるカロテノイドが細胞膜のSMに結合し、細胞膜機能を変化させる事も報告された。この様に、食品成分の中には、SMの生合成を変化させたり、細胞膜上のSMに直接働く物質が少なからず存在する事が明らかになってきた。私は、食品に含まれるスフィンゴ脂質やリモノイド、カロテノイド等が消化管分泌細胞のSM組成や細胞膜機能をどの様に変化させるのか。それによってインクレチンの分泌量等にどの様な影響を与えるのかを細胞レベル、分子レベルで詳細に明らかにし、メタボリックシンドロームを未然に防ぐ食品成分群の全容を解明したいと考えている。当研究では、食品に含まれるスフィンゴ脂質やリモノイド等が消化管分泌細胞の細胞膜機能をどの様に変化させるのかを細胞レベル、分子レベルで詳細に明らかにする。その為に脂肪酸受容体GPR120に焦点を当て、A. GPR120の脂肪酸による活性化キネティクス解析実験系の確立が最初の関門となる。本年度の研究で、この部分をクリアでる事が決定し、その為この様な評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、GPR120の活性化を評価する実験系が確立した。今後は、SM合成に影響を与える分子がGPR120の活性化キネティクス/インクレチン放出に与える影響の詳細な解析を行う。具体的には、SM合成を阻害する事が知られているミカンの果皮に含まれるリモノイドと、細胞のSMに作用する事が知られている海藻由来のカロテノイドがGPR120の活性化キネティクスに与える影響を検討する。さらに、将来的には、対象物質を広げ、食品抽出物や、食品から精製した物質の中からGPR120の活性化キネティクスに影響を与える物質群をスクリーニングする。我々は以前の研究でSM合成酵素の一つSMS2を欠損したマウスは高脂肪食誘導性の肥満/糖尿病に耐性を示す事を明らかにした。SMS2を阻害する物質は、細胞膜のSM量を減らし、抗肥満/抗糖尿病効果を持つ事が期待される。しかし、これまでの所、SMS2を直接阻害する物質は見つかっていない。そこで、これらの研究に加えて、上記研究で用いた食品抽出物や、食品から精製した物質の中からSMS2阻害物質に関してもスクリーニングを行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究計画がスムーズに進行し、予想以上に残金が生じた。しかし、その分の研究は次年度に行う予定ある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用する額が生じたが、最終的には計画にある研究を全て行い、同額が必要になる。よって次年度使用額と合わせて計画どうりに使用する。
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